性同一性障害gidの治療に使われる性ホルモンは、その性ホルモンの影響を受けて、FTMは男性化オペなど)、MTFは女性化と各々の特徴を備えていく。そして、その性の特徴である認知力、感情に関しても、同時に備わっていくと考えられている。

ホルモン治療による影響の1つに、脳の萎縮と痴呆のような副作用の変化を伴うことがある。そのため、性同一性障害gidの性ホルモン治療は、脳に対する性ホルモンの影響を研究する上で特殊なモデルとされている。

この研究では、性同一性障害のFTM25人、MTF14人を対象とし、性ホルモン治療前治療4か月に脳のMRIで脳の変化を観察した。FTMはテストステロンを、MTFはエストラジオール、抗男性ホルモンで治療した。これらの性ホルモンの治療期間中の脳の構造変化評価するために、脳の容積も測定した。

エストラジオールと抗男性ホルモンの投与を受けていたMTFの脳の海馬の部分が減少していた。この部分の減少は、脳室の拡大により反映されたことを示している。※海馬:脳の記憶、空間能力にかかわる部位

さらに、プロゲステロンの血中濃度が、脳の灰白質の変化に関係していた。記憶と感情をつかさどる脳皮質にも影響しプロゲステロンは、これらの作用に重要な役割をしていると考えられる。

Subcortical glay matter changes in transgender subjects after long-term cross-sex hormone adimistration.
Psychoneuroendocrinology. 2016 ;74:371-379