性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

性同一性障害gidへの職場対応

性同一性障害gidにおける入社後の戸籍変更は、一般的な会社の対応はまちまちです。印象的には、「上司」次第という感じです。

さらに上層部に掛け合ってくれる上司であればよいですが、その話を上司で止めらてしまうとどうにもなりません。

もちろん、実際には、戸籍変更をしたら、クビということはありえません。会社次第ではありますが、本来、入社後に戸籍を変えることによって不利益を被ることはあってはならないことで、今までにも、戸籍変更が理由で懲戒解雇を認めている判例はありません。ただ、現実的には、性同一性障害への理解がなく難しい職場もあるのは確かです。

そのため、それ以上の権利を会社に要求してもダメということであれば、今までの判例から負けることはないでしょうけど、裁判で決着しようとなると時間の浪費とストレスはかなりのものになってしまいます。

職場が女性・男性の役割など関係ない職場であれば、特に問題がないところが多いです。

以下に挙げる職業は少し特殊です。特に自衛官は、一度「その性」で入隊をした場合は、戸籍変更は難しいとされています。

普通の会社では当事者に軍配が上がりますが、特に自衛隊となると特殊すぎるので、当事者が勝つとは限らない感じもします。裁判になった例はありませんので、なんとも言えませんが最近は朗報もちらほらあります。

性同一性障害gidの特殊な国家公務員の場合

消防士、自衛官、警察官のMTFは、今までお会いしたことがないので、割愛します。

FTM消防士の対応

基本的には、仕事場にはカミングアウトはしていないひとが多いです。

胸オペはふつうにしています。戸籍を変えるとなると、同じ都道府県での引き続きの勤務は困難なので、退職せざるをえないようです。

「都道府県別に採用試験を受けているため、新たに違う都道府県で試験を受けなくてはいけないようです。そのときは、男性として試験を受けるために女性としての試験より難しくなるのではないか?」(現職消防隊員談)

ただ、最近は消防署長の理解があるところも多いようです。

FTM警察官の対応

各警察署、部署によって、対応はまちまちです。

戸籍変更に向けて、退職するものもいれば、婦人警官→戸籍を変えて、男性の警官と採用され現在も活躍されている方も多くいます。

FTM自衛隊の対応

上官の理解があっても、周囲の理解が得られないかもしれません。

通常の会社と違い、特殊な規律もあり、入隊後に別の性になることは難しく、なおかつ、できたとしても実質的に左遷(階級が下がるかはわかりません)になると言っていました。(現職自衛官談)

現職の自衛官FTMで当院で胸オペ(乳腺摘出)された方がいますが、カミングアウトはしていません。

除隊しないと戸籍は変えられない模様です。

なお、防衛大学校に所属する学生FTMが、担当教師に胸オペをしたい旨を伝えると、「手術したら、退学」と言われたそうです。

(追加情報)性別変更を女→男として、まったく自分のことを知らない部署に異動なら、退官せずにOKという話を別の現職自衛官から聞きました。

お風呂の問題が・・・と言っていましたが。

ここで挙げた例は、あくまでもそこに現職で働いているひとから聞いたこと、個人の見解もあります。

実際には大丈夫だったり、ダメな場合もあるかもしれません。詳しくは、各省庁にお尋ね、確認お願いいたします。

その他

FTM教員、MTF教員の対応

小中高の公立に関しては、校長先生に理解が得られれば、スムーズに事が進められるようです。

校長先生の理解がない場合は、教育委員会に申し出るのも手ですが、その職場にいずらくなってしまう可能性もあります。

FTMの体育の教員例では、女性枠で採用されている場合でも、止めずにそのまま性別変更できている方はいます。

いろいろ当院に来る当事者に聞いていると、最近の各職場の対応も、かなり柔軟な対応が伺えます。せっかく何年も積み上げた職場の実績を捨て去る必要はないでしょう。

多分、無理と言っていたいたのに、職場に報告してみたら意外にあっさり事が進んだ話もよく聞きますので、まずは、あきらめないで、理解のありそうな上司を見つけて相談して、一歩前進してみてください。

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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