声が低くなった感じがしない?―FTMと声の変化

※本記事は、性別違和・胸オペを専門とする医師が責任を持って執筆したものです。

文責医師:大谷 伸久(性別不合学会認定医)

目次

FTMの声は、男性ホルモンでどのように変わるのか?

  • 男性ホルモン(テストステロン)の投与により、多くのFTMは声が低くなります。
  • 声の変化は思春期と同じく声帯の肥厚・長大化が起こるため、不可逆性のある変化です。
  • 平均的には、投与前の約192Hzから、1年で約125Hz(一般的な男性の範囲)まで下がると報告されています。

どのくらいの期間で変化が現れるのか?

  • 最初の3~6か月で大きく変化するケースが多い。
  • 早ければ2週間で声の変化を実感する例も。
  • ただし、変化のスピードや最終的な声の低さには個人差が大きい

研究例:
15人中9人が9か月以内に男性とほぼ同じ音域に。(Deuster,2016)
2週間で声が変化した症例も報告。(King,2001)


声が低くならないケースとは?

  • 約24%のFTMが、治療後にボイスセラピーを必要としたという報告あり(Nygren, 2016)。
  • 声の「疲れ」「不安定さ」「出しづらさ」などの悩みが残ることも。
  • 特に、若年者より中高年の方に変化しにくい傾向も。

男性ホルモンの種類で、声の変化、影響は違う?

  • ネビド(テストステロン・ウンデカン酸エステル)でも、他剤でも、声への影響に有意な差はなかったと報告されています。
  • 血中テストステロン濃度とも、声の周波数の変化は相関しなかった

FTM診療に携わる医師より

  • 男性ホルモン治療をしているのに「思ったより声が低くならない」と感じている方へ。
  • 声帯の変化は個人差が大きく、時にボイスセラピーの併用が必要な場合もあります。
  • 声の状態に不安を感じたら、声の専門医(音声外来)や言語聴覚士にご相談ください。

FTMの声にまつわるQ&A

  • Q. 声が低くなった感じがしないのですが?
    →自分の声は毎日聞いているため、少しずつ変化していても気づきにくいことがあります。実際には変化していても、自覚しにくいのはよくあることです。第三者に「声が低くなったね」と言われて初めて気づくケースも多いです。
    Q. 男性ホルモンを始めたのに、半年たっても声が高いです。大丈夫?
    → 年齢や声帯の構造により時間がかかる人もいます。1年を超えても変化が乏しい場合は、評価を受けるのがよいでしょう。
  • Q. 男性ホルモンをやめたら声は元に戻る?
    → 戻りません。声帯の変化は不可逆的です。
  • Q. ボイスセラピーって何をするの?
    → 発声訓練や呼吸法を通じて、より安定した低音を出すサポートを行います。

※オンライン診療するにあたり厚生労働省の研修プログラムを受けています。

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このコラムを書いた人

性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久のアバター 性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久 自由が丘MCクリニック 院長

平成6年北里大学医学部卒業(医籍登録362489号)
国立国際医療センター、北里大学病院、順天堂大学医学部研究員などを経て、平成20年:自由が丘MCクリニック開業

当院は、主に性別不合(GI)専門クリニックとして、性別不合(GI)学会認定医による性別違和に関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。

ホルモン治療、手術についてわからないことなどありましたら、気軽にLINE、またはメールからお問い合わせください。

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