高齢者の性同一性障害GIDの治療 

性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

性同一性障害(gid)の医療は、新しい医療分野とされます。一般的な医療に比べて、gidの規模が小さいために役立つ医学文献など少なく、医学的根拠に乏しいことも多いです。

特に高齢者のgidにとっては、より情報が少なく、若年者のgidからの医学情報を得る必要があります。

性別適合手術(SRS)を終えた中年以降、または、長期間ホルモン治療しているgidのためには、医療機関は、gidの薬物治療について重要な影響を知っておく必要があります。

高齢者のgid治療の情報はほとんどありませんが、若年者gid用には、いくつかの治療ガイドラインがあるので参考になるでしょう。

gid治療のガイドラインは、個々が希望する治療を叶えていくように手助けをするものです。
一般的な治療の方法として、5つの治療過程があります。性同一性障害の診断→精神治療→希望する性での生活→ホルモン治療→外科的手術を通して、性別適合を実現できます。

ホルモン治療は、個々に扱われ、ホルモンのリスクと利益などを考慮しながら、個人のゴールを目指します。

gid当事者は、女性化、男性化を最大限に発揮できるように模索するかもしれません。また、一方では、二次性徴を最小限に抑えつつ、ホルモン治療をすることも可能です。

肉体的外見のために社会的な性の役割を演じることができない人たちにとっては、ホルモン治療は大事な役割を果たします。

ホルモン治療の目的は、部分的または全部の生殖腺の分泌を抑えることです。高齢者gidにとって、ホルモン治療のゴールは、これらの若年者gidとは少し違います。

特に高齢者のFTMは、すでに閉経になっていることもあり、すでに生理がないことも多いです。MTFの場合は、加齢の変化で、すでに男性ホルモンは低濃度かもしれません。

そのため、ホルモンは若年者に比べて、少ない量のホルモンの補充で足りることも多いです。

このようにgid治療も多様化しているため、高齢者gidの薬物治療は、個々に合わせる必要があるでしょう。

高齢から始めるホルモン治療

性同一性障害、トランスジェンダーの人の中には、人生の後半に、ときには50歳や60歳を過ぎてから新しい性に移行する人もいます。性ステロイドの使用に際して、若年者よりも高齢者の方が、生物学的効果が少ないという医学的証拠はありません。

性ホルモンの使用が許されない病気がない限り、年齢のためだけに高齢者だからといって、性ホルモン治療を差し控える必要はありません。ただし、副作用のリスクは年齢によって異なることに注意します。

血糖を良好にコントロールする能力が加齢とともに低下することがあるので、性ホルモンの段階的導入を推奨します。通常低用量から始めます。
治療例

  • MTF;エストロゲン5㎎~、1回/2w~
  • FTM;テストステロン125㎎~、1回/3w~

高齢者は通常、性別適合手術(SRS)に対する希望や期待度が低いかもしれません。明らかに、新しい性への外科的適応は、通常、手術のリスクが高いことに関して、より控えめになるかもしれません。

高齢gid、トランスジェンダーの治療に対して考慮すること

•性ホルモンの用量の調整が必要な場合がある。
新しい用量は、新しい性の特徴を維持するために十分でなければいけない。

• FTMにおける男性ホルモン(テストステロン)の心血管系への有害作用の証拠はまだない。
老化に伴って、骨密度の維持は非常に重要である。

•驚くべきことに、加齢に伴い、FTMよりMTFの方が心血管系死亡率は高い。この逆転した性差の原因はまだ明らかにされていないが、MTFに対しては、心血管系リスク防止を積極的に取り組むべきである。

医学論文の情報
Endocrine treatment of aging transgender people.
Rev Endocr Metab Disord. 2018 Sep;19(3):253-262.

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性同一性障害gidのホルモン治療を始める方へ

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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