GIDの症状は、世界共通していますが、その発症頻度、MTF、FTMの割合は人種、国による地理的背景により若干異なります。

西ヨーロッパにおいては、MTFはFTMよりも2~3倍いると言われています。しかしながら、日本におけるFTM、MTFの発症頻度、割合などはよくわかっていません。

ヨーロッパ社会では、男らしい女性よりも女らしい男性が受け入れられにくい傾向があります(※補足あり下記参照)。このような男性に対する性の役割の固定観念が強いため、MTFの相談がより増加する傾向があります。

これはGIDと診断を受けることにより、自分自身を守ることにあるからです。また、MTFはFTMに比べると、希望する性への適応が難しく、その今置かれている状況を隠す傾向にあります。

多嚢胞性卵巣症候群 (PCOS) は、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームに関連することが知られており、FTMでもしばしば見られます。したがって、PCOS の症状は、これら個人のために健康管理をする必要があります。

多嚢胞性卵巣症候群とは?

原因不明であるが、ホルモン分泌や糖代謝などの要因が複雑に関与していると言われている。月経異常、不妊、多毛、にきび、肥満が主な症状。

目的
本研究の目的は, 日本におけるGIDの発症率と, 日本の FTM患者におけるPCOS とインスリン抵抗性の発生頻度を評価することです。

対象と方法
104人のMTFと 238 人のFTM患者が研究対象とされました。月経周期やホルモンの治療歴などの病歴を聞き、先天性副腎過形成およびホルモン分泌腫瘍などの他の疾患を排除するために、経膣または経直腸超音波検査を含む医学的評価、および血中ホルモンレベルおよびインスリン抵抗性の指標の測定が行われました。

結果
人口統計に基づいて、mtf と ftmの発症頻度は、それぞれ10万人当たり約3.97人 と8.20人 であり、mtf 対 ftm 比は、1:2でした。FTM 128人 は、この評価の前にはホルモンを治療していませんでした(未治療のグループ)。残りの50人はアンドロゲン自己投与しており、未治療群のうち、32.0% は PCOS と診断され、30.1% はインスリン抵抗性でした。

結論
日本のGIDの性別比は白人とでは異なる。PCOS とインスリン抵抗性は、FTMによくみられる一般的な所見といえます。

余計なコメント
☞今回は、日本の研究グループが発表した医学論文でした。多嚢胞性卵巣症候群は、しばしば男性ホルモン分泌が上昇しています。FTMの中にもたまに男性ホルモン治療を始める前から、かなり男っぽいひと、血液検査をしてみると、男性ホルモンが男性並みに高いひとがいます。今回の報告からもFTMの約30%が多嚢胞性卵巣症候群なので、もしかして、このようなひとも多嚢胞性卵巣症候群の可能性もあります。
☞出典医学論文:Distinctive Features of Female-to-Male Transsexualism and Prevalence of Gender Identity Disorder in Japan:The Journal of Sexual Medicine:Volume 8, Issue 6, June 2011, Pages 1686-1693

※補足
医学文献からのデータから、米国のgid人口の性比は、 DSM-IV の診断でMTF/FTM= 5:1であり、英国は、MTF/FTM=6:1 の比率をを示しています。

セルビアの研究のgid比は 3:2 (MTF/FTM) でした。西欧諸国におけるMTF性転換症の発症率の増加は、診断基準がまだ十分に正確ではないという理由で、ある程度の説明が可能です。

このことは、女装とクロスドレッシングの空想による性的興奮の既往を持つMTFは、性同一性障害として診断されているからです。

この分野の専門家、レイブランチャードは、自己女性化愛好症autogynephilia 自己女性化愛好症autogynephilia 自己女性化愛好症autogynephilia としてこのカテゴリに名前を提案しており、このように、実際には、彼は autogynephiliaを性的倒錯としています。(ブランチャード 2000)。

この性的倒錯の要素とは、女性化した肉体を持っている自分を想像したり、女性化した自分をイメージして、性的に興奮してしまうことです。

この研究で得られた性分布は、男女のトランスジェンダー行動に対して、異なる社会の受け入れる姿勢によって説明することができます。それは同性愛や性転換者に関係なく、女性の男性の行動は、男性の女性の行動よりも社会的な環境で受け入れられます。

したがって、男性的な行動を持つ人は、女性的な行動を持つものよりもはるかに適応性があり、受け入れられています。セルビアのデータでは、80年代後半と90年代初頭に大幅にMTFの人数に変化が生じています。近年、人口比においてMTF、FTMの比率が同じ傾向になりつつあります。
☞出典医学論文:「SOCIODEMOGRAPHIC PROFILE OF TRANSSEXUAL PATIENTS」
Psychiatria Danubina, 2009; Vol. 21, pp 220–223