MTFのプロラクチノーマの実際

性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

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プロラクチノーマとは?

脳下垂体から分泌されるプロラクチンが高い濃度の値を示す。高プロラクチン血症をいいます。

症状は、インポテンツ(勃起不全)、乳汁漏出、女性化乳房ですが、エストロゲン投与でも似たような症状を起こすので、エストロゲン治療しているMTFの場合は、症状が重なりわかりにくくなります。

MTFにおけるエストロゲンとプロラクチノーマの関係

エストロゲンは、脳下垂体からのプロラクチンの分泌を促進し、容量依存性と言って、使う量、頻度が増えればプロラクチノーマになりやすくなります。

女性に対してエストロゲンは、広く使われていますが、生物学的男性にエストロゲンを使う場合には、ほぼMTFに限られ、女性化のために使います。そのため、容量も多く使われることが多いです。通常のエストロゲン量の治療では、プロラクチノーマにはなりにくいとされています。

MTFにおいては、エストロゲン治療をして約4か月後にプロラクチン濃度が高くなることが多いのですが、その後プロラクチン濃度が下がってきます。その後も、プロラクチン濃度が高く維持する場合には、脳下垂体が肥大している可能性があります。

このように、エストロゲンの容量を必ずしも多く投与していないにも関わらず、プロラクチン濃度が維持している場合は、プロラクチノーマの可能性があります。

MTFのプロラクチノーマの実際

エストロゲンに関連するプロラクチノーマは、自己過剰投与に摂取したものが報告されていますが、エストロゲン投与期間が10年単位で治療し、低用量で治療していたのちに、プロラクチノーマになった症例も報告されています。

エストロゲン投与を1年間の間に、プロラクチンが基準値の7倍高くなった。その後、プロラクチン濃度は正常になり、その後は基準値に戻るも、10年の経過後にプロラクチン濃度が再上昇した例も報告されています。

エストロゲン治療開始後の1年以内でプロラクチン濃度が非常に高くなる場合には、下垂体にエストロゲンの感受性がある可能性があります。

エストロゲン治療の最初の1年で急に高くなる場合には、注意が必要です。

エストロゲン治療開始してからの1年間は、数か月に1回血液検査をしてチェックしましょう。

あまりに高い場合は、エストロゲン治療の中止、MRI検査などを行います。治療が必要な場合には、抗ドーパミン薬の投与が必要になります。

MTFプロラクチン推移
  • 脳下垂体…卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモン、プロラクチン、成長ホルモンなどの性腺刺激ホルモンが分泌されます。これらの刺激ホルモンは、直接的に作用するわけではなく、性腺、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモンは、卵巣に、プロラクチンは、乳腺に作用してその性腺から、それぞれ、エストロゲン、プロゲステロンなどが分泌されていきます。
  • プロラクチン…prolactin;乳汁分泌ホルモンとも言われる。脳下垂体から分泌され、出産後の乳汁分泌に携わります。

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