執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

「胸オペを受ける際に診断書はあったほうがよいが、なくても問題になることはありません。ただし、その後のホルモン治療、性別適合手術を受ける際には、診断書が必須となります」

術後に生命保険会社から保険金の支払いの条件によっては、診断書は必須です。

性同一性障害の診断書がどこでどのように必要になってくるのか説明していきましょう。

なぜ診断書が必要か?

性同一性障害治療のガイドラインは、当事者のためのものではない!?

性同一性障害ガイドラインにおける胸オペの扱い

「性同一性障害ガイドライン」というものを知っているでしょうか?これは、性同一性障害のひとに携わる医療従事者の治療指針みたいなものです。

これには、一応、胸オペをする際にも、性同一性障害であると診断をしてから胸オペをするのが望ましいとあります。

ただし、このガイドラインは性同一性障害gidのひとのためのものではなく、あくまでも当事者に携わる医療従事者についてのガイドラインであることです。

仮に、診断書(意見書)がない状態で、胸オペを受けたとしても、基本的に今後の治療について、当事者にとって不利益を受けることはありません。そのようなこともガイドラインに記載があります。

例えば、「胸オペを勝手にしたので、その後の治療はしませんとか、できません」とか、その後に「診断書は書けません」、性別変更する際に裁判所に提出する「診断書も書きません」などがあっては、いけないということです。

性同一性障害gidの性別適合手術SRS、これはFTMであれば子宮・卵巣摘出をするのですが、この場合は、診断書が必要になります。(異なる書式の診断書は必須)

性別適合手術は、別の言い方をすると「去勢」することです。これは生殖能力がなくなります。そのため、万が一、診断されたあとに、やはり女性に戻りたいとなると、自分にとっての不利益としては、身体的には子どもを産むことができない状態になります。

子宮、卵巣を摘出すると元に戻すことはできないので、それだけ慎重に手術に臨んでもらいたいのです。それだけ、ハードルが高くなるため、性同一性障害の診断も医者2名にしてもらう必要があります。

ガイドライン上では、診断書でなく意見書を得る場合

ホルモン治療の有無にかかわらず、胸オペをする場合、少なくとも胸オペに関する意見書を得てから、医療チームにおいて検討して、手術の適応があるか確認します。

ガイドラインはFTM当事者のための治療指針ではないので、FTM当事者にとっては少し煩雑になる傾向にあります。

考え方によっては、当事者にとってはメリットがあまりないのかもしれません。

胸オペをする側(医師)からすると、あとで、なにかしらで「文句」を言われないように厳密な手続きを経た上で手術しましたという担保が欲しいという見方もできるのでしょう。

「どうしてもガイドラインで治療を進めたい」場合には、当クリニックでは以下の対応もしています。

意見書作成☞医療チーム(東横GID委員会)において検討し、手術の適応があることを確認します。

生命保険のために、胸オペ前に診断を受けておく

現在生命保険に加入している場合には、胸オペより診断を先に終えていないと保険料が出ない可能性があります。

  • 〇 診断☞胸オペ 生命保険の支払いOK
  • ×  胸オペ☞診断 生命保険の支払い却下

よく考えればわかるかと思いますが、なにかしらの原因があって手術しなければいけないとき、一般的には、診断が先に来て、その後に手術しましょうとなります。

性同一性障害は病気ではありませんが、生命保険会社からすると病気として扱っているので、やはり胸オペしてから性同一性障害の診断があとでは、整合性がなくなってしまいます。

そのため、生命保険で保険金を受け取る条件が整っているひとは、胸オペ前に診断書を取得するのがよいでしょう。

【関連サイト】
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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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