文責 性別不合(GI)学会認定医 大谷伸久

ノンバイナリーの手術治療の重要性

ほとんどのトランスジェンダー研究は、トランス男性またはトランス女性という性別二分法に該当する患者に焦点を当てています。これにより、外科手術に関する「ノンバイナリー」のジェンダーアイデンティティの理解が大きく欠けています。

今回は、ノンバイナリーの胸オペに焦点を当てた研究を紹介します。

目的と方法

2012年から2017年にかけて「胸オペ」を受けたノンバイナリー患者を対象とした観察研究です。人口統計データと手術データを収集し、術後の生活の質と体のイメージに関するアンケートを実施しました。

結果

性別不一致を持つ合計458人の患者が胸オペを受け、そのうち58人(13%)がノンバイナリーでした。ノンバイナリー患者全員が出生時に女性の性別を割り当てられていました(AFAB:100%)。

最も一般的な手術は乳頭移植を伴う乳房切除(72%)

乳頭移植を伴う乳房切除(19%)でした。

5が一番高いポイントで評価するリッカート尺度の5段階で下記事項を評価。
1.患者は生活の質(平均4.88、標準偏差±0.34)
2.運動の快適さ(平均4.07、標準偏差±0.98)
3.性生活(平均4.02、標準偏差±0.92)
4.服を着た状態での外見の快適さ(平均4.97、標準偏差±0.18)
5.服を脱いだ状態の向上(平均4.69、標準偏差±0.47)

ノンバイナリーの胸オペの現状

ノンバイナリー患者に対する胸オペは、トランスジェンダー手術の実践において重要な割合を占めており、肯定的なケアを提供する外科医は、この集団の特性と治療オプションについて熟知している必要があります。

ノンバイナリー患者に対する胸オペは、トランスジェンダー手術の中で重要な割合を占めています。肯定的なケアを提供する外科医は、この患者集団の特性や治療オプションについて知っておく必要があります。

性別不一致に対する外科的および医療的治療は、アメリカではますます普及しています。ケアへのアクセスが良くなり、治療の効果が認められるようになったからです。トランスジェンダーの人たちが性別を肯定するための手術の需要が増えるにつれて、その技術や結果を報告する外科論文も増えてきました。しかし、多くの論文はトランスジェンダーのみに焦点を当てていて、ノンバイナリーの患者については詳しく触れていません。

ノンバイナリーの人たちは、出生時に割り当てられた性別に関係なく、男性でも女性でもないと感じています。このような患者が求める外見や治療方法は一様ではないため、理解が重要です。ノンバイナリーの人たちは、「ジェンダークィア」「ノンバイナリー」「ジェンダーフルイド」「アジェンダー」などと呼ばれ、男性や女性の性別の枠にとらわれないアイデンティティを持ちます。

しかし、ノンバイナリーの人たちに関する健康文献はほとんどなく、その多くは行動科学に基づき、このグループの心理社会的および性的特性に焦点を当てています。性別肯定ケアへのアクセスが増えるにつれて、トランスジェンダー医療に不慣れな外科医でも、バイナリー性別ではない患者に出会うことが増えてきました。これが初めての対話で患者と外科医の双方に混乱をもたらすことがあります。
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ノンバイナリーの健康(レビュー)

【参考文献】
What is “Nonbinary” and What Do I Need to Know? A Primer for Surgeons Providing Chest Surgery for Transgender Patients
Aesthetic Surgery Journal, Volume 39, Issue 5, May 2019, Pages NP106–NP112

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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【医師 大谷伸久の経歴】
平成6年北里大学医学部卒業(医籍登録362489号)
国立国際医療センター、北里大学病院、順天堂大学医学部研究員などを経て、
平成20年:自由が丘MCクリニック開業

GID(性同一性障害)学会認定医、テストステロン治療認定医