オペの失敗とは?
胸オペの失敗というとどのようなことを思い浮かべるでしょうか?
オペ前には、医者からオペ方法、術後の合併症などの説明を聞くと思います。
手術の説明するときにも、やはり心配で、「失敗することありますか?」と、当事者からたまに聞かれることがあります。
どこもそうだと思いますが、「失敗はないです」と答えるでしょう。
この質問に「失敗することあります」と答える医者はいないと思います。
そもそも、このような質問をすること自体がもしかして意味がないのかもしれませんね。
また、その人によって「失敗」はそれぞれ考え方も違うかもしれません。
それでは、胸オペの失敗について考えてみましょう。
胸オペの失敗の意味
そもそも「オペの失敗」って、なんでしょうか?
一般的なオペの失敗と言うと、右と左を取り違ってしまった、余計な血管を切ってしまった・・・などかもしれません。
術後の出血、感染などは、細心の注意を払っても、一般の手術でも起こりうることです。
ところで、胸オペの失敗というと、なにを想像しますか?
壊死(組織が腐ること)、胸のへこみ、でこぼこ、しこり、凹凸、傷跡の綺麗さ、たるみが生じるなどでしょうか?
これらを詳しくみていきましょう。
手術後に起きる可能性のある症状
血腫のこと
血腫とは、溜まった血液の塊のことをいいます。
どのような手術でも血腫は起こりえますが、特に胸オペ後に特徴的で、術後に一番起こり得る症状の1つです。
術後6時間以内に起こることが多く、ある一定の頻度で起こります。
その頻度は、2~5%です。
この症状が起きてしましまったら、血腫を除去しなくてはいけません。
方法としては、
- 軽度:吸引をする
- 重度:乳房内から出血している可能性があるため、止血処置が必要
血腫を放置しておくと、乳房内の血流などが悪くなりますから、乳輪・乳頭への血流も少なくなるため、壊死を起こすことがあります。
乳頭・乳輪の壊死(えし)
壊死(えし)とは、身体の一部の組織に血流が行かなくなり、組織が腐ってしまうことをいいます。
胸オペでは、手術方法がいくつかあり、一番キズの小さい方法で行うU字切開では、乳輪・乳頭の壊死は起きにくいです。
では、どのような方法の場合に、壊死が起きやすいのでしょうか?
①乳房が大きくて、下垂が重度なタイプでは、余計な皮膚を切除しなくてはいけない上に、乳輪・乳頭を移動させる手術方法のときに起きやすいとされます。
血腫ができてしまった、タバコを吸う人や糖尿病、免疫が落ちているひとなどもリスクが高くなります。
②胸オペと乳頭縮小を同時に行う場合も、壊死の頻度が高くなります。同時に行いたい気持ちはわかりますが、できるだけ分けて手術した方がよいでしょう。タイでは同時に勧められるかもしれませんが、できるだけ同時に行わない方がよいです。
海外で行う病院は、わざわざ飛行機に乗って手術をするひとを相手にしているわけで、もし壊死を起こしても、アテンド、もしくは、海の向こうの病院に文句を言っても、ほぼ埒があきません。
FTM当事者のブログの体験談なんか見ると、胸オペと乳頭縮小を同時に行って、乳頭が壊死を起こしたというのはいっぱいでてきます。
乳頭縮小の手術時間は1時間ほどで、ダウンタイムも短いので、長期休暇は必要なく仕事の翌日の休みなどに利用するだけで大丈夫なので、同時手術は避けましょう。
胸に水が溜まる
胸に「水が溜まる」ということはどういうことでしょうか?
ここでいう、「水」というのは、「浸出液」のことを言います。
浸出液は、ケガをしたときに出る、「汁」とほぼ同じ成分です。
身体の一部の場所に炎症を起こすと生じる症状です。
胸オペの場合は、乳腺を取り出した場所が空間になるため、内部がうまくくっつかないと炎症を起こすことがあります。
原因は、術後に安静を保てないことが一番の原因です。
この症状は、失敗したように感じますが、これもある一定の頻度で生じます。
治ったと思っても、術後1カ月ほどは無理のしないように注意したいところです。
胸オペ後のへこみ、でこぼこ凸凹
通常、皮下脂肪の層は、まんべんなく均一に残すものですが、どこか局所的に脂肪を取り除いてしまう場合に起こります。
胸オペ後のしこり
たまに、術後に脂肪の塊ができる場合がありますが、たいてい数か月でなくなります。
皮膚が硬い
手術後に皮膚が硬くなっている、ということも多くみられます。
手術するとどうしても避けられない症状でもあります。
ケガなどをしたり、切ったりすると、人のからだは、これらを治す過程で、キズの周囲に治そうとする細胞が集まってきます。
その過程で硬くなります。数か月もするとたいてい元のように柔らかくなってきます。
皮膚の色が青紫に内出血している
打撲したときと同じで、極端なことをいうと、手術もからだを痛めつけているといっしょです。
そのため、内出血はある程度は避けられません。ただし、これらも一カ月もすると内出血は消えていきます。
傷跡のこと
キズは、丁寧に縫えば通常キレイに治ります。
- 医師サイドの問題:そもそも先生が縫うのが雑、もしくは、下手くそ、どちらかです
- 患者さんサイドの問題:キズが治療途中に感染し、キズの治りが悪くなることもあります
また、ケロイド体質を持っている場合もあります。
胸オペ後のキズだけでなく、他の手術後のキズも綺麗でない場合は、このようなケースもあります。
通常、ケロイド体質は、手術後しばらくは、綺麗だったのに、知らないうちにキズが赤くて、盛り上がってきたという場合が多いです。
もし、ケロイド体質であれば、予防する薬がありますから、術前に聞いてはいますが、ぜひ申告するようにしましょう。
胸オペ後のたるみ
胸オペ後のたるみは、失敗には入らないでしょう。これは、元々が乳房の下垂があるために、術後必然的に生じてしまうためです。
手術の失敗ではありませんが、手術前にたるみそうなのに、「大丈夫、たるみは絶対でない」などは、説明がそもそも違っていると言った方がよいのでしょう。
胸オペ後にわかる肋骨の変形
乳房のふくらみがあるときにはわからないのですが、肋骨の変形や出っ張りは意外にあるものです。
人間の身体は、必ずしも左右対称ではないからということもあります。
この原因には、乳房の本来の大きさ、そして、胸郭の変形、肋骨の変形があります。
この写真の症例の場合は、乳房本来の大きさによるもので、胸郭の変形ではありませんが、乳房のボリュームの差があります。
明らかに見た目の大きさが違う場合なら胸オペ前にもわかるのですが、手術前からそれほど胸の左右差がわからず、乳腺を取り出して初めて胸郭の変形、肋骨の変形がわかることも多いのです。
ただ、手術前でもよく触ればわかる場合もありますので、ご本人が胸オペ前から認識しているひともいます。
FTMの方は、自分の胸をあまり触りたがらないのでまったく認識していないことも多いようです。
その他、胸オペ前でもわかるものに、先天的な胸郭の変形がある漏斗胸というものもあります。
胸オペ後の脇付近のふくらみ
写真で示された矢印の部分は、生物学的女性の場合、男性に比べて元々膨らんでいることが多いのも特徴です。
たまに、胸オペ後に、ふくらみが取り残されているのでは?という人がいますが、この場所は胸ではなく、皮下脂肪が厚くなった場所なのです。
関連サイト
☞胸オペの手術方法
☞胸オペの疑問解決コーナー
☞胸オペに関してのQ&A
☞FTM胸オペをお考えの方へ GID学会認定医が胸オペの全てを解説
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