執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

「胸オペは何歳から受けられるの?」「胸が大きくなる前に受けなくても大丈夫?」

そして、未成年とくに、乳房の発達段階において、何か身体に影響があるのでしょうか?

乳房が大きくなることによって、胸オペの手術方法に何か影響を生じるのでしょうか?

このように、いろいろな疑問があることでしょう。このような疑問にお答えするコーナーです。

まずはじめに、胸オペを受ける対象年齢をどのような解釈しているのかを「性同一性障害の診断のガイドライン」ではどのように説明しているのでしょうか?

胸オペは何歳から受けられる?

FTM治療の順番とガイドライン上の胸オペできる年齢

ガイドラインでは、FTMの治療は、原則的に、

  • 第1段階 精神的サポート
  • 第2段階 ホルモン療法と胸オペ(乳房切除術)
  • 第3段階 性器に関する手術(性別適合手術)

という順番で進められますが、必ずしもこの順番通りに受けなければならないということではありません。

乳房は、二次性徴の終る18歳まで発達し、生殖機能に影響を与えない器官です。

胸オペは、第2段階の治療に相当し、原則は対象年齢が18歳です。

この点からしても、ガイドラインの胸オペの年齢条件とほぼ一致します。

18歳未満は、胸オペが受けられない!?

ガイドライン上では、18歳が対象年齢ですが、18歳未満は胸オペが受けられないのでしょうか?

乳房の発達は、10歳ぐらいから始まり、イラストの⑤まで発達します。
(二次性徴時の乳房の発達)

胸の発達が大きく発達すると、個人差はありますが、⑤の段階ではかなり大きくなります。

実際には、胸オペをする時点で医療機関を訪れるのは、二次性徴がすでに終わり、胸の発達がすでに終えていることが多いのです。

最近の女性の思春期の発達は8歳または9歳という早い時期に始まることが多く、 12歳の若さで思春期の完了もありえます。

特に中学生から高校生の時期に、胸の著しい成長がみられる場合には、親(親権者)の承諾が得られるのであれば、18歳未満で行うことも考慮した方がよいでしょう。

胸が著しく成長する場合は、18歳未満も考慮する理由

乳房の大きさと下垂は、のちの胸オペする方法に影響してきます。

乳房が大きく成長すると、年齢とともに下垂するため、U字切開での方法が難しくなります。

ただし、性同一性障害(GID)の診断がついていても、小学生では難しいので、身体の負担を考えると高校生以降が望ましいかもしれません。

(参考)海外医学論文からのデータ

胸オペを18歳未満で受けるメリットとデメリット

メリット

  • ナベシャツを着ける期間が短くなる
  • 生殖機能に影響しないため、ホルモンバランスの崩れは生じない
  • 乳房が大きく、特に下垂する前に胸オペすると、傷跡が最小限の手術方法が可能

デメリット

  • 乳房を手術前の大きさに戻せない
  • 親権者の承諾、同意が必要(令和4年4月1日より18歳以上は親権者の同意が不要)
  • 身体の負担が成人に比べ大きい
  • 手術の理解、危険性について理解できる年齢でなればいけない
  • 性別違和が幼少期から続いているのであれば問題ないことが多いが、一時的思いつきだと後悔する
    (従来の研究報告では、胸オペの後悔はほぼ0です)

年齢が18歳未満は、親権者の承諾が必要(令和4年4月1日より)

乳房が大きくなる前、もしくは大きくなってしまって下垂する前に、早くに胸オペがしたい気持ちもよくわかります。そのためには、家族や周りのひとの理解と協力が必要です。

※民法の改正により令和4年4月1日より、18歳以上は親権者の承諾は必要ありません。
未成年の同意書ダウンロード(18歳未満の方の方)

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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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