胸部の手術(胸オペや乳房形成術)のあとに、胸から脇、あるいは腹部にかけて「細長い棒のようなしこり」が現れたり、腕を上げると皮膚がピーンとひきつったりすることがあります。これは「モンドール病(Mondor’s Disease)」と呼ばれる疾患です。

「手術が失敗したのではないか」「再発したのではないか」と不安になる方も多いですが、正しく知れば決して怖い病気ではありません。本記事では、モンドール病の概要、原因、頻度、そして対処法について詳しく解説します。
1. モンドール病とは?
モンドール病とは、皮膚のすぐ下を通っている静脈(浅在静脈)に炎症が起き、一時的に血栓(血の塊)ができる「血栓性静脈炎」の一種で、私たちが一般的にイメージする病気とは異なり、症状の1つとして捉えるとよいでしょう。
※1939年にフランスの外科医アンリ・モンドールによって報告されたため、この名がつきました。
通常、静脈は柔らかいため皮膚の上から触れることはありません。しかし、モンドール病になると血管が硬くなり、まるで「ギターの弦」や「細い針金」のような索状(さくじょう)のしこりとして触れるようになります。
2. 主な症状と特徴
モンドール病には非常に分かりやすい特徴があります。
* 索状のしこり: 乳房の下部から脇、またはお腹へ向かって、数センチから十数センチにわたる硬い棒のようなものが触れます。

* 皮膚のひきつれ(溝状の陥没): 腕を上げたり胸を張ったりすると、そのしこりに沿って皮膚が引っ張られ、溝のような凹みができることがあります。

* 痛みと違和感: 発症初期には、触れると痛みがあったり、動かした際に「突っ張るような痛み」を感じたりすることがあります。
3. なぜ「胸オペ」のあとに起こるのか?
胸部手術(FTM胸オペ、乳房切除、豊胸術など)のあとに発症する理由は、主に以下の3点に集約されます。
* 血管への直接的なダメージ: 手術中に組織を剥離したり切開したりする過程で、胸部の静脈が一時的に損傷を受け、炎症が波及するためです。
* 術後の固定と圧迫: 術後の血腫を防ぐためのバストバンド等による「強い圧迫」が、静脈の流れを一時的に停滞させ、血栓を誘発することがあります。
* 活動制限と炎症反応: 手術という侵襲に対する身体の防御反応として、血管壁に炎症が起きやすくなります。
4. 発症の頻度は?
医学論文の報告によれば、乳房に関連する手術後の発症率は 0.5%〜1.1% 程度 とされています。100人に1人いるかいないかという確率であり、外科手術の合併症としては「稀なもの」に分類されます。
* 発症時期: 術後すぐではなく、術後2週間から4週間目あたりで自覚することが多いのが特徴です。
* 対象: 女性だけでなく、FTM(トランスジェンダー男性)の胸オペ後や、男性の女性化乳房手術後にも同様に発生します。
5. 診断と治療
「放っておいても大丈夫?」
原則として「放置」で治ります。モンドール病の最も重要なポイントは、「良性疾患であり、自然に消えていく」という点です。
* 経過観察: 特別な治療をしなくても、通常 1ヶ月〜3ヶ月以内 に血管は再び柔らかくなり、しこりもひきつれも跡形もなく消えてしまいます。
* 薬物療法: 痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)の飲み薬や塗り薬を使用して、炎症と痛みを和らげることがあります。
* マッサージの禁止: 初期段階で無理に揉みほぐそうとすると、炎症を悪化させる可能性があるため、自然に消えるのを待つのが鉄則です。
6. モンドール病を疑ったら
もし、術後の検診までの間に「胸の下に硬い線がある」「腕を上げると突っ張る」といった症状に気づいたら、以下の対応をとってください。
* 執刀医に連絡する: まずは手術を受けたクリニックに連絡し、症状を伝えてください。
* 温める(急性期を過ぎてから): 激しい痛みが落ち着いたあとの違和感に対しては、軽く温めることで血行を促進し、回復を早める場合があります(※必ず医師の指示を仰いでください)。
7. まとめ
胸オペ後に現れるモンドール病は、身体が手術という大きな変化に適応しようとする過程で起きる「一時的な不具合」のようなものです。
* 手術の失敗ではありません。
* ガンのような悪性の病気ではありません。
* 必ず、自然に消えていきます。
鏡を見てひきつれに驚いてしまうかもしれませんが、まずは深呼吸をして、クリニックに相談しましょう。時間が経てば、元の柔らかい質感に戻りますので安心してください。






コメント