胸オペをお考えの方は、さまざまなお悩みを抱えているかと思います。
胸オペに関する情報を以下にまとめてみました。
このようなわからないようなことありませんか?
・胸オペとはどんな手術か知りたい
・診断を受けていないけど、自分にもできるか知りたい
・手術費用がどのくらいかかるか知りたい
・術後の合併症が不安
・手術跡がどうなるか知りたい
・術後のケアが不安
・どんなリスクがあるのか知りたい
・麻酔方法を知りたい
・仕事はいつから復帰できるか知りたい
1つずつ詳しく説明していきましょう。
1. 胸オペは、性別適合手術の1つ
胸オペは性同一性障害であるFTM(Female to Male)の性別適合手術の1つで、乳腺を摘出または切除し、胸を男性化、平らにするための手術です。
男性と自認するFTM、FTXの人たちは、胸が女性のように膨らんでいると身体に対する違和感や嫌悪感、そして苦痛を感じます。これらを改善するための胸オペは、より生きやすく過ごすための手段の1つです。
- 男性であると確信できる。
- ナベシャツから解放される。
海外では、胸オペは、「トップ・サージャリー;top sugery」と言って、性別適合手術の上位の手術、下の手術(卵巣、子宮摘出)は、「ボトム・サージャリー;bottom surgery」と呼んでいます。
2. 胸オペするための条件
1)診断書の有無
性同一性障害ガイドライン(精神科学会)においては、診断されてから胸オペを行うことを推奨しています.
とくに診断書がなくても、その後の治療、性別変更において不利益を受けることはありません。ただし、今後男性ホルモン治療を行う場合は、診断書が必要になります。
【関連記事】
☞胸オペをしたいのですが、性同一性障害の診断書は必要ですか?
2) FTX(Xジェンダー)でもできる?
FTM以外に、性別に違和感があり、性別変更まで望まないけど、自分のからだに違和感や嫌悪感を持っているFTX(エックスXジェンダー、中性、クィアqueer)もいます。
とくに、乳房のふくらみは違和感の1つで、一般的に、ふくらみ=おっぱいは、女性の象徴として考えられているからでしょう。
Xエックスジェンダーだと手術できないと思っているひとも多いようですが、FTXも性別違和を持つことには変わりないので手術は可能です。
これは、性同一性障害の診断書がないと胸オペはできないと、インターネット上のブログなどに書いてありますが、性別違和があるようであれば、手術にはまったく問題ありません。
3)年齢条件
できれば中学3年生くらいからが適応と考えます。ただし、20歳未満は、親権者の承諾が必要になります。
【関連記事】
☞胸オペは何歳からできる?年齢条件はある?
☞若年者の胸オペの意識
4) 男性ホルモン治療による影響
男性ホルモン治療をしているかしていないかは、手術の適応には関係がありません。また、術後の仕上がりにも影響はありません。
胸オペ前に男性ホルモン治療を始めると、胸が少し小さくなることもありますが、ほぼ限定的です。男性ホルモン治療を始めてからでもよいです。
男性ホルモン治療を始めると、胸オペをする気持ちが強くなる傾向にあります。
男性化をどこに趣くかはひとそれぞれです。胸オペをまず先にする理由は、早く男性として見えるようになりたいから、胸はナベシャツで隠せないから、見た目を重視、パス度をあげたかったからなどいろいろな理由があります。
男性ホルモンを最初に始める理由は、すぐに見た目は変わらないのですが、一番の変化は、声が低くなる、生理が止まる、男性的な顔になるなどでしょう。
このように、胸オペが先でもよいし、男性ホルモン治療を最初でもよいので、自分が気になることから治療していきましょう。
【関連記事】
☞胸オペと男性ホルモンの関係
☞FTMの一般的な治療
3. 胸オペはどのように行われるか?
1) 乳房の脂肪でなく、乳腺を摘出
女性の象徴とされる乳房を取り除くには、手術する必要があります。
胸を平らにするためには、乳腺を取り除かなければいけません。
胸の構造は、乳腺、脂肪から構成され、乳房の70~80%を占めるこの乳腺を摘出します。乳腺の周囲の脂肪のみを吸引しても男性化した平らな胸にはなりません。
ときに、一部の美容外科医は、これらのことを十分に理解していないで、乳房の脂肪吸引のみで済ませてしまう場合がありますが、これでは胸が平らにはなりません。
2) 胸を平らにする困難さ
胸の大きい一般女性が、胸を縮小させる乳房縮小手術というのがあります。胸オペは、この乳房縮小手術とは異なり、乳房内のすべての乳腺を取り除くことによって生じる余った皮膚をいかに取り除くかが、一般女性に対する乳房縮小術とは違い、難しいところです。
一般的には、胸があまり大きくないひと(Aカップ、Bカップ程度)であれば、乳輪辺縁下半周を切開(U字切開)するため、術後の傷跡が一番小さくて済みます。
すでに手術前から乳房の下垂が重度であるほど皮膚が余ります。
それに伴って、乳首・乳輪も新たな場所に移動する必要が生じ、手術が一層複雑になり、胸の下方に横長の傷跡が残ります。
3) 手術前にナベシャツを着ていることの問題点
胸のふくらみを洋服から隠すためには、根本的解決には至りませんが、ナベシャツを着る選択肢があります。
ただし、このナベシャツも胸が小さく下垂がないひとだと大丈夫なのですが、胸が大きいひとは、加齢でも下垂を生じるくらいですから、ナベシャツで胸を圧迫するとなおさら下垂がひどくなります。
そのため、手術方法は横長の傷跡になる手術方法しか選択できなくなります。
【関連記事】
☞胸オペとナベシャツとの関係は? 胸を小さくする?
4. 手術の種類
1) 胸の状態によって手術方法が変わる
胸オペの方法にはいくつかの種類がありますが、胸の状態によって手術方法が異なります。
【関連記事】
☞手術方法にはどんなものがあるの?
その胸の状態とは、大きさ、下垂またはたるみ、皮膚の弾力性などです。手術の方法を決める上で、決め手になるのは、胸がどの程度下垂しているかです。
胸が下垂しているということは、ほとんどの場合、皮膚がたるんでいることが多いからです。
下垂度別に手術方法を見ていきましょう。
2) 胸オペの手術方法の種類
乳房の下垂度に応じて、大きく3つの方法に分類できます。
①胸の下垂がないひと
一般的な手術方法は、乳輪辺縁の下半周を切開する方法です。
傷跡がもっとも目立たない方法です。この術式の適応した胸は下垂、たるみがないことが条件になります。正式な手術名ではありませんが、当事者の間ではU字切開とよく呼ばれています。
下垂度0☞胸が小さい人、下垂していない胸のオペ方法
このU字切開による方法が、一番キズが目立ちにくいので、本来であればすべてのひとにこの方法を行いたいところです。
しかしながら、どうしても、胸が皮膚が伸びてしまって、下垂しているひとは、次の選択肢が考えられます。
②胸の下垂が微妙な人
U字切開を選択すると術後たるみが生じる可能性が高いですが、あえて、第一選択に大きいキズを作りたくないひと向けです。
下垂度1☞下垂が微妙な胸のオペ方法
③胸の下垂、たるみが重度
どう考えても小さい傷跡になる手術方法が取れないひとです。手術跡が大きく目立ち、下垂が重度であると、乳輪の移動もしなけばいけないこともあります。
胸が重度に下垂している人は、皮膚のたるみを切除するにあたり、場合によっては、より大きな切開創を必要とし、手術後創の瘢痕が目立つことがあります。
これはご本人にとって重要なことで、もしかすると、皮膚のたるみよりも大きな切開創の瘢痕の方が気になることもあり得ます。
下垂度2,3☞FTMの胸オペ方法:胸の下垂が強いひと向け
意外に自分の胸は、客観的にどのようなタイプか判断できず、どの手術方法が適しているかわからないと思います。
また、「キズは気にしないから、1回で平らにしたい」「皮膚のたるみが多少出てもよいので、キズは小さい方法で行いたい」など思うことはひとそれぞれです。
下垂が重度でも、1回の手術では、無理でも数回に分けると、術後のキズを最小に抑えることもできます。
手術方法によって長所と短所がありますので、それらをご本人の胸ではどうなのか比較検討します。
あなたのニーズに合わせることはもちろんのこと、画一的に決めることなく、ご本人のご希望やご意向も十分に尊重しながら、最適な手術を選択します。
5. 胸オペの麻酔はどのように行われるか?
胸オペだからと言って、なにか特殊な麻酔をするわけではありません。麻酔の大切なことは、手術中に痛みがなく苦痛を与えないことはもちろんのこと、みなさんが一番心配なことは、手術後の痛みではないでしょうか?
胸部の手術では、以下の麻酔方法があります。
- 全身麻酔
- 硬膜外麻酔
ほとんどの医療機関が、全身麻酔を選択します。硬膜外麻酔だけで手術を行うことはなく、全身麻酔と併用することが多いようです。
メリットは、硬膜外ブロックを併用すると、全身麻酔のみで行うより術後の痛みを極力抑えることができます。ただし、硬膜外麻酔は難しい手技なので、併用しない医療機関が少ないのが現状です。
【関連記事】
☞胸オペの麻酔方法
6. 手術日までの流れ、手術方法の決定
1) 手術方法の決定
胸オペを希望される場合は、一度来院していただき乳房を拝見します。遠方の方は、オンライン診療、zoomの利用も可能です。
手術の方法がいくつかあるので、メリット、デメリットなども説明した上で、一番最適な方法をご提案します。
2) 手術日決定から当日まで
【関連記事】
☞胸オペするまでの流れ、確認していただきたいこと
3) 手術前の生活
禁煙・禁酒:喫煙によって痰の量が増えることにより、肺炎などの合併症が起きやすくなります。このような合併症を予防するために、手術前には禁煙することが大切です。
手術や麻酔の影響により肝臓に負担がかかることがあります。手術前には、禁酒することも大切です。
【関連記事】
☞胸オペ前にタバコを吸ってはいけない理由
4) 手術前の準備
・ホテルに宿泊の場合、1、2泊分の着替え
・スマホ用電源などの通信機器
5) 手術当日の注意点
手術当日は食事制限があります。制限される時間は手術開始時間によります。一般的には、牛乳、固形食は、術前の8時間前までとなります。水、お茶、ゼリーなどの咀嚼を伴わないものは大丈夫です。
【関連記事】
☞胸オペはその日に帰れるの?日帰りが可能?
7. 胸オペのリスクと合併症
1) 胸オペの術後リスク
胸オペの術後のリスクは、他と一般的に行われる手術と同じです。
医学の進歩により、ほとんどの人が手術を安全に受けることができるようになりました。にもかかわらず、手術によって大きなストレスを受けることには変わりなく、手術中や手術後の経過が必ず100%良好であるとは限りません。
手術前には、手術方法に加え、手術のリスクや合併症についても知っておく必要があります。十分に話を聞いて納得した上で、手術に同意することが大切です。
【関連記事】
☞胸オペのリスクについて知っておこう
2) 合併症
術後の合併症とは、手術後の好ましくない症状や状態をいいます。主なものは、キズの感染、感染症などあります。合併症が起こったときには、それぞれの状況、状態によって治療が行われます。
胸オペに特有な合併症には、他の手術に比べると血種、水が溜まることが多いことです。
【関連記事】
☞胸オペ後の合併症はどんなものがある?
8. 術後ケアについて
1)ドレーンについて
ドレーンは、乳房内溜まった血液を強制的に排出させます。出血がそれほどなければ、手術数日で抜きます。
胸オペに特化しているわけではなく、他の手術でも多く用いられています。
【関連記事】☞胸オペで使うドレーンとは?
2)痛みについて
術後のキズの痛みは、誰もが感じるものです。ただ、痛みがどれくらいの期間続くのか、痛みがどの程度なのかは人によって異なりますし、麻酔方法によっても異なります。
本人でなくてはそのつらさがわかりにくいものですが、胸オペの場合は、全身麻酔に加えて、術前に神経ブロックをすれば、術後は筋肉痛より少し痛い程度で過ごすことができます。
3)傷跡について
傷跡は、6か月~1年をかけて次第に目立たなくなります。
術後やケガをしたときに皮膚を縫う場合、ほとんどのケースで、術後1週間~10日の範囲内で抜糸を行います。胸オペの際は、乳輪辺縁下半周(U字切開)または、アンダーバストになります。
抜糸をする頃には、すでに皮膚がくっ付いています。抜糸する前に傷口を確認し、とくに問題がなければ抜糸します。また、抜糸翌日から浴槽へのお風呂が可能になります。
4)乳房の皮膚の感覚が鈍くなる現象
胸オペに限らず手術をした場所は、ほとんどの場合、一時的に皮膚の感覚鈍くなる傾向にあります。感覚が完全に戻るひともいれば、以前の70~80%ぐらいに低下することもあります。
個人差はありますが、6か月から1年で感覚が戻ります。
9.胸オペの経過について
1) 術後の仕事復帰
どのような手術でも、早く治すためには、多少の安静が必要です。ドレーンを抜いた後は2,3日は十分おとなしくしてほしいところです。術後抜糸の時点で特に問題がなければ、術後1週間で仕事復帰できるでしょう。
【関連記事】
☞術後について(アフタ―ケア)
2) 術後の運動やスポーツ
普段、サッカー、バスケ、ソフトボールなどのスポーツをしているひとも多いかと思います。胸オペは、上半身の手術なので、できるなら、特にコンタクトスポーツは、術後最低1カ月程度から始めましょう。
【関連記事】
☞胸オペは、手術後の運動に影響するの?
10.胸オペの手術費用について
胸オペの費用は、税抜き56~79万です。費用の違いは、乳房のたるみの程度によって変わります。
以下に、自由が丘MCクリニックの料金を例にそれぞれ詳しく解説します。
i) 乳房の下垂がない場合
乳房の下垂がなく、皮膚の弾力性がある場合には、乳輪辺縁の下半周を切開して、乳腺を摘出します。傷跡が一番小さく、目立ちにくいU字切開法です。
¥616,000(税込み)
全身麻酔代、薬代を含みます。追加料金はありません。
ii) 乳房下垂が中等度の場合
皮膚のたるみ部分だけ切除します。(乳輪の移動はしません)
¥759,000(税込み)
全身麻酔代、薬代を含みます。追加料金はありません。
iii) 乳房下垂が重度の場合
皮膚のたるみの切除だけでなく、乳頭・乳輪を上部に移植します。
¥869,000(税込み)
全身麻酔代、薬代を含みます。追加料金はありません。
1)支払い方法
医療機関によっては、支払い方法が異なりますが、一般的には、下記の支払い方法があります。ただし、医療ローンが使えない医療機関もありますので、事前に問い合わせておきましょう。
①現金②クレジットカード③医療ローンがあります。
③医療ローンについて
審査が必要です。
【関連記事】
☞胸オペと医療ローン
※年率利子は、医療ローン約9%、リボ払いは18%です。
2) 生命保険
胸オペは、性同一性障害の治療の一環として認められていますので、最近ではたいていの生命保険会社が保険金の支払いをしています。ただし、性同一性障害の診断が手術前に行われていることが条件になります。
【関連記事】
☞胸オペをすると加入している生命保険の保険金は下りるの?
3) 医療費控除
胸オペをしたら、税金が返ってきます。会社員の場合は、自動的に会社が手続きしてくれるわけではないので、確定申告をしてください。
【関連記事】
☞胸オペをしたら医療費控除の手続きを
11.胸オペを受けての実際の感想
12.胸オペの国内と国外の病院選び
胸オペを国内で行うか、国外で行うかは、何を基準にして決めるかによります。
手術とは本来、信頼関係があってこそ成り立つものです。手術前にだれに行ってもらうかわからない状態で決めることは少し不安を伴います。
費用だけで決めるとなると、国外とくにタイは物価も安いため、手術代も国内に比べて安く済みます。しかしながら、アテンド代、ホテル、飛行機代など含めると意外に国内とかわらないことがわかります。
【関連記事】
☞胸オペの国内での病院選び
☞胸オペの海外での病院選び
未成年の方
☞未成年のご両親の胸オペ承諾書(書類ダウンロードできます)
当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
☞クリニックのご案内
ホルモン治療、手術についてわからないことなどありましたら、気軽にライン、またはメールからお問い合わせください。