FTMもXのひとも、胸を取っても後悔しない理由

文責医師:性別不合(GI)認定医 大谷伸久


私が思う、FTMもXのひとも、胸を取っても後悔しない理由を記載してみます。

胸を取っても後悔しない理由

胸の大きさが「重荷」になっている人は、シス女性にも多く、胸を「取る・減らす」ことで身体的・精神的に軽くなる感覚は、FTMの人に特有の話ではないのです。

「胸がなくなると不安」より、「胸があることで困っていた」現実の方が勝る人が多いのかもしれません。

胸が「あるかないか」ではなく、「自分がどうありたいか」で決めた結果なので、後悔が少ないとも考えられます。たいていFTMの方の多くは、思春期以前から長い時間をかけて悩んできた末に手術を決断しています。そのため、「勢いで決めた」というケースは稀であり、「やって後悔」より「やらなくて後悔」の方が多い傾向なのかなと思います。

胸オペ後に「やらなければよかった」という声は当院では聞いたことがありません。それは、一般女性でも「胸の大きさ」が悩みになるように、胸をなくすことで身体的・精神的に楽になる人が多いからかもしれません。

海外の医学文献から


胸オペ後の「後悔率」を報告した英語医学文献を紹介します。


研究①

“Regret after Gender‑affirmation Surgery: A Systematic Review and Meta‑analysis of Prevalence”(2021、Plastic and Reconstructive Surgery Global Open)

  • FTMの胸オペ後の後悔率:<1%(95 %CI <1%〜<1%)
  • 全性別適合手術を対象としたFTMの後悔率は極めて低く1%未満でした。

研究②

“Long‑Term Regret and Satisfaction With Decision Following Gender‑Affirming Mastectomy”(2023、JAMA Surgery)

  • 1990–2020年に米国の施設で胸オペを受けた139名に対して調査
  • 決定満足度は中央値5/5、後悔スコアの中央値は0.0/100。
  • 調査対象者に後悔したと答えた者は0名です。

補足:大規模調査からのデータ

  • オランダのWiepjesらによる約6,800名を対象とした長期追跡では、後悔率はFTM 0.3%、MTF 0.6%と報告されています(平均約11年後の調査)
  • さらに包括的なレビューでは、全性別適合手術後の後悔率は約1.94%、うちFTMは0.8%、MTFは約4.0%とされています

まとめ

論文・レビュー名FTMの胸オペ後の後悔率
Regret after GAS(2021年メタ解析)<1%
JAMA Surgery の調査(1990–2020年、米国139名)0%(中央値)
オランダの Wiepjes 研究(約6,800名対象)0.3%
総レビュー(7928例)約0.8%

これらの結果から、FTMの胸オペ後に後悔する人は極めて少数であり、高い決定満足度と長期的に安定した結果が示されています。


一般女性からも紐解けるか?

1. 胸の大きさが「重荷」になっている人は、シス女性にも多い

  • 一般女性でも、大きな胸がコンプレックスという人は少なくありません。
    例:猫背になる、視線が気になる、服が似合わない、肩が凝る、運動しづらい etc.
  • 実際に、美容目的で胸を小さくする手術(乳房縮小術)を受けるシス女性も多数います。

☞ 胸を「取る・減らす」ことで身体的・精神的に軽くなる感覚は、FTMの方に特有の話ではない?


2. “胸がない”ことで得られる自由・快適さ

  • 「胸がなくなったら、シャツが似合うようになった」
  • 「走るのが楽になった」
  • 「無駄に見られなくなった」

こういった声は、FTM当事者だけでなく、縮胸した女性からも聞かれる点です。
☞「胸がなくなると不安」より、「胸があることで困っていた」現実の方が勝る人が多い。


3. 自分の身体に対する主導権を得られる

  • 胸オペは、「性別に沿うための手術」と見られがちですが、実は多くの人にとって「自分の身体に対して、主導権を持つこと」の表現でもあります。
  • 胸が“あるかないか”ではなく、「自分がどうありたいか」で決めた結果なので、後悔が少ないとも考えられます。

4. 後悔が少ない背景にある「長年の葛藤」

  • FTMの方の多くは、思春期以前から長い時間をかけて悩んできた末に手術を決断しています。
  • そのため、「勢いで決めた」というケースは稀であり、「やって後悔」より「やらなくて後悔」の方が多い傾向。

胸オペ後に「やらなければよかった」という声は当院では聞いたことがありません。それは、一般女性でも「胸の大きさ」が悩みになるように、胸をなくすことで身体的・精神的に楽になる人が多いからかもしれません。

※オンライン診療するにあたり厚生労働省の研修プログラムを受けています。

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このコラムを書いた人

性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久のアバター 性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久 自由が丘MCクリニック 院長

平成6年北里大学医学部卒業(医籍登録362489号)
国立国際医療センター、北里大学病院、順天堂大学医学部研究員などを経て、平成20年:自由が丘MCクリニック開業

当院は、主に性別不合(GI)専門クリニックとして、性別不合(GI)学会認定医による性別違和に関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。

ホルモン治療、手術についてわからないことなどありましたら、気軽にLINE、またはメールからお問い合わせください。

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