トランスジェンダーにとっての加齢と「閉経」について

目次

1. 高齢になると増えるトランスジェンダー特有の悩み

年齢を重ねていく中で、トランスジェンダーの方には特有の課題があります。
たとえば、介護や高齢者医療の場で差別されるのではないかという不安や、孤独感が強くなりやすいこと、経済的な負担、医療者や医療制度が必ずしも十分に理解や配慮をしてくれるとは限らないことなどです。さらに、高齢になると持病が増え、病院にかかる機会も多くなるため、こうした問題はより複雑になります。

また、アルツハイマー病や認知症はトランスジェンダーの人に多い可能性があることがわかってきていますが、ホルモン治療が認知機能にどんな影響を与えるかについては、まだはっきりとした答えは出ていません。

2. 「閉経」という言葉は必ずしも当てはまらない

「閉経」という言葉は、卵子が作られなくなり月経が止まることを意味します。これは基本的にシスジェンダー女性を前提にした概念で、ホルモン治療を受けていないトランスジェンダー男性(出生時女性とされた方)のみが経験します。

ホルモン治療を続けている多くのトランス女性にとって、閉経という考え方はあまり関係がないと感じられています。実際、ある調査ではほとんどのトランス女性が「ホルモン治療は一生続けるつもり」と答えていました。

一方で、テストステロンを使っているトランス男性についての研究がほとんどなく、臨床的にはこちらも生涯にわたって治療を続ける方が多いと考えられています。

3. 高齢でのホルモン治療について

何歳になったらホルモン治療をやめるべき、という決まりはありません。45歳以上では経口薬の量を少なめにしたり、貼付薬を使う人が増える傾向がありますが、これがシスジェンダー女性の更年期治療の知見と同じように扱えるかどうかは、まだ結論が出ていません。

高齢になってからホルモン治療を始めることが危険かどうか、または年齢とともに量を減らすべきかどうかについては、まだ十分なデータがありません。ただし「何歳になったら絶対にホルモン治療をしてはいけない」という制限はなく、むしろ高齢になってから始めた人の方が、若くして始めた人よりも生活の質(QOL)が高いという報告もあります。


【参考医学文献】
Transgender health and the impact of aging and menopause
Climacteric 2023 Jun;26(3):256-262.

当院でのホルモン治療の考え方

年齢とホルモンの自然な変化

  • 女性は思春期から閉経前まではホルモン(エストロゲン)が高く保たれますが、50歳前後から急激に減少します。
  • 男性は思春期以降にテストステロンが高くなりますが、40歳以降は少しずつ下がっていきます。

トランスジェンダーの方のホルモン治療について

当院では、トランスジェンダーの方の中年期から高齢期にかけてのホルモン治療についても、一般的なシスジェンダーのホルモンの推移と同じように考えることが自然だと考えています。

つまり、

  • 若いときほどに、頻繁にホルモンを打つ必要はない
  • 50歳を超えたころからは、投与する頻度や量を少しずつ減らしていくのが望ましい

と考えています。


副作用への注意

年齢とともに、血栓症・肝臓への負担・心血管系のリスク など、ホルモン治療による副作用の心配も増えてきます。そのため、若いときと同じ量や頻度を続けるよりも、加齢に合わせてホルモンを少なくしていくことが安全性の面でも望ましいと考えます。

※オンライン診療するにあたり厚生労働省の研修プログラムを受けています。

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このコラムを書いた人

性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久のアバター 性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久 自由が丘MCクリニック 院長

平成6年北里大学医学部卒業(医籍登録362489号)
国立国際医療センター、北里大学病院、順天堂大学医学部研究員などを経て、平成20年:自由が丘MCクリニック開業

当院は、主に性別不合(GI)専門クリニックとして、性別不合(GI)学会認定医による性別違和に関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。

ホルモン治療、手術についてわからないことなどありましたら、気軽にLINE、またはメールからお問い合わせください。

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