自分らしく生きるために、ケースレポートFTM編

文責 性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

テーマ「自分らしく生きる」

【患者紹介】
氏名:Aさん
診察当時年齢:20代
診断名:性別不合(性同一性障害)、FTM
生物学的な性別:女性
家族構成:両親と妹の3人家族

【来院前】
◆自分史
小さい頃から女児の遊びを嫌い、男児と遊ぶことが大好きであった。
二次性徴の時期になると、 身体の違和感は強くなり、自身の性別や身体的特徴に対して強い味悪感、不快感を抱く。
高校生の時にアルバイトに 挑戦してみるも面接にて性別が不明瞭であることを理由に何か所も断られる。その後、引きこもり傾向になる。
◆家族関係
・カムアウト、性別適合手術(SRS)に反対、自殺計画など
◆来院の動機
17歳のときに、「性同一性障害」という名称を知る。
自身は当事者であることに気付き当院来院。男性ホルモン治療を始めたい。その後に、胸オペをして、性別適合手術したい!(希望)

【来院後】
◆診断・家族の同意・治療開始(ホル注・手術)
治療開始当初「生への執着がない」
◆身体的変化:男性化(声が低くなる、ひげが生える)、胸オペによる男性化
◆家族がAさんのGID受容と手術の同意
◆多くの当事者との出会い
(母とともにピアサポート参加)
◆RLE(実生活経験)の指導と実践⇒パス度の上昇
◆心の変化(Aとの家族)
性別適合手術を受け、戸籍変更し男性となる。

臨床家としての活動
【① 関わりのポイント】
・多くの当事者は、自己(アイデンティティ)を偽って生きている感覚を持っている。
・自己否定感を抱き続けることで、ありのままで生きられない日常が続くことが「生きることができなくなる」ほどの重大なストレスになっていた。
・ネガティブ経験、スティグマ
・自殺企図をする一方で、治療を開始し将来的には男性に性別変更し、生きていく意思を持っている。
【② 他の職種の関わりや連携】
・性同一性障害は医療や法律の介入を要することが多い。
◆当事者への生活支援
・精神的サポート
・RLE(実生活経験)検討
・カムアウトの検討
・ピアサポート、支援団体紹介(ローモデルの入手)
・SRS後の戸籍変更の手続き
◆家族支援
・傾聴:わが子がGIDであることについて
☞怒り・恥・わが子が別人になる恐れ・悲嘆などの感情の表出
【③ みなさんに伝えたいこと】
・人のセクシャリティーは、カテゴリではとらえきれない豊かさを内包している。
・マイノリティへの抑圧や差別は、マジョリティを前提とした社会において、文化や制度の恩恵を受けられず相対的に被害を被る。
・自身の専門分野を背景とした「性の多様性」の意識と理解を深めてほしい。
当事者がこれが自分なんだ!」とじられるジェンダー で生きることを支援するには皆さんならどうしますか?
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