男性ホルモンで「どれくらい声が低くなるのか?」

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声の高低を測る指標:F0(基本周波数)

  • 声の高さを客観的に評価する際に用いられるのが音声の基本周波数(F0:Fundamental Frequency) です。
  • F0とは、声帯が1秒間に何回振動しているかを示す数値です。F0は Hz(ヘルツ) という単位で表されます。
  • 1 Hz = 1秒間に1回の振動する単位で、数値が高い → 声は高い、数値が低い → 声は低いとなります。
    つまり、 Hzが下がる=声が低くなるという関係です。

シス男性の声の変化

男性ホルモンによる声変わりのメカニズム

  • テストステロン増加
  • 喉頭(声帯)が成長
  • 声帯が「長く・厚く・重く」なる
  • 振動数(Hz)が低下
  • 低い声になる

● 具体的なF0の目安(平均値)

区分F0(Hz)の目安
成人女性約 200~220 Hz
思春期前の子ども約 250~300 Hz
成人男性約 100~130 Hz
  • ※ 個人差が大きく、体格・声帯の長さ・ホルモン感受性などの影響を受けます。
    声の高さは 感覚ではなくHzで測定可能でき、「どれくらい低くなるか」は Hzの変化量 で説明できます。

このグラフは、男子の思春期における声の基本周波数(F0)の変化を示したグラフです。





8歳〜10歳では約270Hzと高音域ですが、思春期の12〜14歳頃に急激に低下し、18歳頃には約110Hzとなり、成人男性の声の高さに達します。
この変化は、テストステロンの増加により喉頭(声帯)が成長・肥厚し、振動数が下がることによって生じます。

年齢基本周波数(F0)平均特徴
8〜10歳(男子)約260〜280Hz女児とほぼ同じ高さ
12〜14歳(変声期)急激に低下し始める
(200Hz → 130Hz程度)
音域が不安定に
15〜18歳(男子)約110〜120Hz成人男性の平均音域に到達

通常、100〜150Hz以上の低下がみられます。

  • 例)変声前:270Hz → 変声後:120Hz前後
  • 平均で「1オクターブ」以上低くなる(= 音階で12音分)

出典例:
Harries et al. (1998). “Changes in the male voice at puberty: vocal fold length and its relationship to the fundamental frequency of the voice.”
→ 男児の声は、変声期に「F0が平均で約145Hz低下」することが示されます。

FTMのテストステロン治療での声の変化

  • 男性ホルモン投与によって、思春期の変声と同様の低音化が起こる
  • 思春期の男性では、約3〜6か月で声が変化しはじめ、1年で男性平均(110〜130Hz程度)に近づき、270Hz → 110Hz程度へと低下
  • 約1オクターブ以上、100Hz以上の変化が一般的


※ただし、変化の程度は個人差あり。変声前にホルモンを始めた方が効果は顕著です。

FTMとシス男性の声変わりの主な違い

項目シス男性(出生時男性)FTM(ホルモン治療)
声変わりの原因思春期の自然なテストステロン上昇注射やゲルなどによる外因性テストステロン
変化開始時期小学校高学年〜中学生頃(12〜14歳)ホルモン開始後、通常3〜6か月以内に変化が始まる
声の変化速度約2〜3年かけてゆっくり低下1〜2年で急激に低下することが多い
声の変化量(F0低下)約270Hz→110Hz(1オクターブ以上)同程度かやや個人差あり:130Hz〜100Hz台になる人も
声帯の発達成長期に伴い喉頭全体が成長成長後のため、声帯の構造的変化は限定的

FTMの変声はどのくらいで完了する?

  • 一般的には、
    • 半年以内に変声が始まり
    • 1年で日常生活では男性として認識される声になり
    • 2年ほどで安定する
  • 早い人は3〜6か月でかなり低くなり、半年でパスする声になることもあります

 声の低さの限界に影響する要因(どこまで低くなるか?)

  1. 声帯の長さ・厚み・硬さ
    • ホルモンによって多少厚くなるが、成長期に自然に発達したシス男性ほどは変化しない
    • 喉頭そのもののサイズ(喉仏の突出など)はあまり変化しない
  2. 遺伝的要因
    • 明確なエビデンスは少ないですが、遺伝的に喉頭が大きい家系(父や兄の声が低い)では、比較的低くなる傾向が臨床的にはあります
  3. 年齢
    • 30代以降で治療を開始すると、変化がやや鈍くなることもある(声帯の可塑性が減少)
  4. 喉の使い方・発声習慣
    • 声帯をうまく使えないと、変声しても高めに聞こえることがある
    • 発声訓練(スピーチセラピー)で改善可能なことも

FTMにおけるホルモン治療開始からのF0(声の高さ)の推移


このグラフは、男性ホルモン治療開始からの月数とともに、平均的なF0(声の基本周波数)がどのように低下していくかを示しています。
治療前のF0は約250Hz(一般的な成人女性の声域)ですが、6か月で急激に低下し、その後ゆるやかに低下して約2年で105Hz(成人男性に相当する値)に到達するのが平均的なパターンです。

FTM当事者とシス男性のF0(声の基本周波数)推移の比較

赤線は、FTM当事者が男性ホルモン治療を開始した後のF0の平均的な変化を示しています。治療前は約250Hzと高めですが、6〜12か月の間に急激に低下し、2年で約105Hz(成人男性に相当)に到達します。

青の点線は、シス男性(生まれた時から男性)の平均的なF0(約110Hz)を示しており、ほぼ一定で推移します。

このグラフより、ホルモン治療によりFTMの声が平均的な男性の声域まで低下することが視覚的に理解できます。


まとめ

FTMの声は、約1〜2年でかなり男性化し、シス男性とほぼ同じF0まで低下する例も多い

  • 変化のスピードは、思春期の自然変声より速い(ただし変化の幅や構造変化は限界あり)
  • 声の低さには、ある程度遺伝要素も影響している可能性がある
  • 声帯の構造的変化が限定的なため、場合によってはスピーチセラピーや声帯低音化手術(thyroplasty type 3)などが補助的に使われることもある

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※オンライン診療するにあたり厚生労働省の研修プログラムを受けています。

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このコラムを書いた人

性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久のアバター 性別不合(GI) 学会認定医/大谷伸久 自由が丘MCクリニック 院長

平成6年北里大学医学部卒業(医籍登録362489号)
国立国際医療センター、北里大学病院、順天堂大学医学部研究員などを経て、平成20年:自由が丘MCクリニック開業

当院は、主に性別不合(GI)専門クリニックとして、性別不合(GI)学会認定医による性別違和に関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。

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