性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

未成年(児童生徒)の性別違和の対応

性同一性障害の9割は中学生までに性別の違和感を覚えます。からだの変化が急激に変わる小学校高学年から中学生を迎える思春期に当たるからです。

望まない性の特徴が著しくなることで、焦りを感じたり、学校生活では、制服を着ることへの嫌悪感が強くなります。

学校生活での性差を感じて、とても息苦しくて、親にも友だちにもカミングアウトできない場合は、自分一人で悩まず、学校の相談員(スクールカウンセラー)や保健の先生に相談してみましょう。

学校生活を送るのに、ある程度の配慮をしてくれるはずです。
性同一性障害の児童生徒に対する学校の対応(文部科学省)

小中高別の性別違和の問題点と解決方法

性同一性障害の9割は、中学生までに性別の違和感を生じます。小中高別に考えてみましょう。

小学生

問題点
小学校高学年までは、学校内でも男の子、女の子の区別があまりないため、性別に違和感を持つことも少ないのですが、高学年ともなると、学校内でも男女差がはっきりしてきます。

思春期(二次性徴)が始まるため、からだもなおさら自分の本来の性別と身体との違いに戸惑いを生じてきます。
小学生時に性別違和を生じている場合は、診断されても様子を見ていくことが多く、医学的治療の対象になりません。

それでは、本人の性別の違和感を放っておいてよいのかというと、そうではありません。
治療はしなくても、まわりの環境を変えてあげるだけでも、気持ち的にもかなり改善されるからです。
解決方法
医学的治療を行う段階ではなく、様子を見ていくことが必要ですが、一番大事なことは、希望する性別に対しての環境を整えてあげることが大切です。

現在、学校には、担任、保健室の先生の他に、相談員(スクールカウンセラー)が配置されていることが多いので、とりあえずは、カウンセラーに性別の違和感を持っていることを伝えましょう。

学校生活の何に嫌悪感を持っているのか、それらを解消して学校生活を深刻な悩みなく過ごさせることが大事になってきます。

中学生

問題点
中学生になると、多くの学校では私服の小学生とは打って変わって、制服で登校することになります。

具体的には、制服を含む服装、髪型、学校内では、トイレ、更衣室などの男女差がはっきり認識されてしまう行動などに嫌悪感を生じます。
解決方法
小学生の対応と同じように、学校の相談員にまず相談して、FTMであれば男の子として、MTFであれば女の子として、学校に配慮してもらいます。

医療機関での診断は、できるだけ、親と同伴するのが望ましいですが、それが現段階でできない場合は、まずは相談員に相談しましょう。

高校生

問題点
学校生活を送る上での悩みは、学校がある程度の対応をしてもらい、周囲の環境を変えていくのは、中学生と同じです。
解決方法
まわりの環境を変えたはいいけど、どうしても自分の身体の変化に耐えられない場合には、二次性徴を抑える薬が有効になることもあります。

医学的治療は、やはり未成年なので、親権者の同意が必要になります。

高校生ともなると、理解力も高くなるので、まずはご本人のみで診断を受けることもできます。診断を受けてから、それ以降に親といっしょに相談しに行くこともよいでしょう。

医療機関(クリニックなど)の介入

医療機関は、性別違和に対して医学的治療はできますが、学校生活、日常生活の困ったことには対応できません。

また、未成年だと日本の法律上、診断まではできますが、親権者の同意がないと医学的治療ができません。そのため、中学生以上の場合は、親にカミングアウトし、同意を得られないと治療ができないのです。

親へのカミングアウト

親のカミングアウトの方法

未成年の場合は、親に言わないことには、医学的治療が始められません。

小、中学生は、周りの環境を自分の希望する性として扱ってもらえれば、悩みが少し軽減するので、治療まですることは少ないかもしれません。

ただ、とくに高校生以上ともなると、まわりの環境の改善だけでなく、身体を希望する性にしていきたい思いも強くなると思います。そのため、親に言わないとなにも治療が始められないのが現状です。

直接話せる場合はよいですが、面と向かって話すと、一方的に機関銃のように話してくる場合には、お互いの話は平行線をたどるので、手紙を書くのも1つの手です。

また、自分の上に理解してもらえそうな兄弟がいれば、その兄弟からなんとなく親の耳に入れてもらう手助けをしてもらうのもよいでしょう。

タイプ別親の反応

肯定的タイプ

幼少期より、反対の性の行動などしていた多くのエピソードがある場合には、親も納得することも多い。
ごく稀ですが、ときに、「気が付かなくて、ごめん」と謝られるときもある。

全否定タイプ

「勘違い」「頭がおかしいだけでは?」と場合によっては、心ない言葉を浴びるかもしれません。たいていは、想定内なので、それほど落ち込むこともないです。

親が厳しい家庭ほど、幼少期から希望もしない本来の性別として、親の手前振舞ってきたひとも多いかもしれません。とくにこのケースでは、なおさら全否定されます。

本当は、親の手前、無理して希望しない性として振舞っていたことに気が付かなかっただけなのですが、親としては、子どもの行動、振舞いでおかしいと思ったことはないからです。

どちらでもないタイプ

親も100%理解はできないし、すべてを受け止めることはできないけど、子どもの幸福を願うなら、自分の思うように生きるのもよいとするタイプもあります。

反対されるつもりで、思い切ってカミングアウトした割には、意外にもこのような対応も少なくありません。

ほとんどの親は、自分の子どもの急な性別違和のカミングアウトに対して、すぐに受け入れられないため、ある程度の受け入れるための時間が必要になることも覚えておきましょう。

普段の生活では、自分のやりたいことだけを主張しても認めてくれるわけがありません。そのため、少しずつ、親に理解してもらうように自分も努力しましょう。

最近では、新書でも性同一性障害に関する書籍も多く出版されているので、それらを親に読んでもらうなどもいいでしょう。
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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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