執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

男性ホルモンを打ち始めてから身体に変化が起き始めるおおよその時期

生理・月経がなくなる(1~6か月)

注射するタイミングによっては、1回で生理が来なくなるひともいますが、来なくなる目安は、男性ホルモン注射を3~4回くらいしてからになります。

まれに男性ホルモンを数年以上治療しているのに生理が来る場合があります。

ホルモン治療をしていても、生理が来る場合には、黄体ホルモンを一時的に内服します。

※注意したいのは、男性ホルモン治療をしているからと言って、避妊対策にはなりません。「生理が来ない=妊娠しない」とは言えません。無排卵性の妊娠もありえるのです。

ニキビ(1~6か月)

男性ホルモンを打ち出すと、新陳代謝が活発になるので皮脂が増えます。40%以上のFTMが、1年以内に経験します。

たいてい、顔より背中によりニキビができやすいです。このことは、男性ホルモンが低い男性が、ホルモン治療するときに起きる現象と似ています。

一般のニキビ治療薬で治します。
ニキビについて

体毛が濃くなる(1~4年)

生まれつき男性の少年が思春期に経験する発毛のパターンで生えてきます。

まず初めに、上唇の上に産毛が生えます。その後、アゴ、頬に生えてきます。発毛の程度は、男性家族のそれと似ています。遺伝的な要素もありますので、個人差が大きいです。

1年以内に胸部と四肢が濃くなる傾向にあり、顔はゆっくり発毛します。約1~4年要します。永久的変化です。

髪の毛が薄くなる(脱毛症)(6-12年)

頭髪・髪の毛が禿げてくる、薄くなるのは、男性ホルモン治療の期間に関係している言われています。男性ホルモン治療をするFTMの50%に薄くなる傾向にあります。

また、髪の毛が薄くなるのは、発毛の程度とも似ていて、男性家族の遺伝的な要素があります。

禿げる頻度、程度は、男性ホルモンの種類に関係しません。注射、パッチ、塗り薬いずれでも起こりえます。
頭髪が禿げる(脱毛症)

筋力が増強する(6-12年)

注射して、勝手に筋力がつくという意味ではなく、筋力トレーニングなどすると今より筋力はつきやすいでしょう。

声の低音化(6-24か月)

15歳ころからの男性の思春期を想像するとよいでしょう。落ち着くまでは、声が出しにくいなどあります。たいてい1年で安定してきます。永久的変化です。FTMのひとも急激には変化しません。
声が低くなる

クリトリスが肥大する(3-6年)

すべてのひとが大きくなりますが、程度はさまざまです。通常、小指の第一関節ぐらいの大きさになります。

海外の医学論文によると、5%~8%のFTMひとが、女性との性交が可能になる大きさまで成長するひとがいます。永久的変化です。

男性ホルモン開始後2年では、3.83±0.42cmというデータも出ています。
☞海外文献
Transsexualism: a long‐term follow‐up after sex reassignment surgery. Nervenarzt, 52, 26–31

膣が萎縮する(3-6年)

女性ホルモンの分泌がなくなるので、かゆみなどがでることもあります。場合によっては、膣炎になることがあります。

身体の構成

臀部(お尻)からお腹にかけて脂肪がつきやすくなりますが、身体全身の皮下脂肪は減ります。筋肉量は増加します。

乳房

男性ホルモン治療を開始すると、乳腺の活動は低下していきます。乳腺組織は萎縮し、乳腺内は一部線維化します。

しかし、乳房の大きさは、さほどサイズは小さくなりません。男性ホルモンにより胸が平らになることはないので、手術が必要です。
FTM胸オペをお考えの方へ GID学会認定医が胸オペの全てを解説

性欲

FTMのほとんどに性欲を感じます。まれに、わずらわしく、爆発的に性欲が生じることがあります。
性同一性障害の性欲とSRSの関係

脂肪が付いてきた

男性ホルモン治療をすると、皮下脂肪は減りますが、内臓脂肪は増えます。体重は平均すると4㎏ぐらい増えます。そのため、BMIは増加します。

ホルモンを摂ることにより、体重は増えますがダイエットなどによりコントロール可能です。

体臭が強くなる

男性ホルモンにより、皮脂の分泌が多くなります。そのため、男性特有の体臭を発することがあります。

物忘れ

更年期後の女性に物忘れが多いことがわかっています。これには、女性ホルモンが関係していると言われています。

FTMで男性ホルモン注射を始めると必然的に女性ホルモンの分泌がなくなるために、女性の閉経状態と同じようになるからです。ただし、個人差があるので、起こらないひとも多くいます。
男性ホルモン治療と物忘れの関係

重要!
卵巣を摘出したあとも、男性化の維持、骨粗しょう症の予防のために、男性ホルモン治療は続けなければいけません。

ホルモンが適切な濃度か、LH(卵胞ホルモン)が正常範囲内にあるかで評価します。

【関連サイト】
推奨される投与間隔

知っておいた方がよい副作用

男性ホルモン治療のQ&A

男性ホルモン治療の中断したい場合

FTMの男性ホルモン治療について

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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