執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

FTMの胸オペの手術方法は、一般女性の乳房縮小手術と異なり、男性のように平らな胸にする手術です。胸オペの難しさは、単に小さく、平らにするのみでなく、場合によっては、皮膚のたるみが残らないようにする必要があります。

手術方法は、乳房縮小に準じたいろいろな手技が報告されています。

人種によって、キズが目立ちにくい白人は、比較的バッサリ長いキズ跡が残ってしまう方法を選択することに躊躇しない傾向にあります。

一方、日本人のほとんどのひとが、キズ跡に対して気にする傾向にあります。

日本人の胸の特徴、皮膚の性状に合った胸オペの手術方法をご紹介します。

胸オペの手術方法のポイント

手術方法の選択に際し、
・乳房の大きさ、下垂の程度、皮膚の弾力性を考慮する。
<手術方法>
①もっとも傷跡が小さいU字切開(乳輪辺縁の下半周を切開)
②アンダーバストに大きい傷跡が残る
③下垂の程度が強いと乳輪の移動が必要
・手術方法を自分で事前に知る方法

胸オペは、脂肪吸引のみでは改善しない!

胸オペの目的は胸を平らにすることです。そのためには「乳腺」を摘出しなければいけません。

乳房の構造は、乳腺、脂肪からなります。胸というとその内容物がほとんど脂肪だと思っている方も多いようです。胸が大きいと乳腺も大きいですが、それに伴って脂肪もたくさんついています。

実際に乳腺が乳房を占める割合は、約80%ぐらいです。

乳房の解剖学的構造をイラストで見てみましょう。

青い点線で囲ったのが乳腺で、これを切除し摘出します。

そのため、このふくらみを取るには、乳腺そのものを取り除く必要があるので、脂肪吸引のみでは胸が平らにならないことがわかりますよね?

FTM(female to male )の胸オペについて理解していない美容外科医などの医師に当たってしまうと、脂肪吸引だけを試みる場合があります。

乳房を占める脂肪の割合は、約20%しかありません。そのため、脂肪吸引だけをしても、平らになるどころかほとんど小さくなりません。

このように、乳房の大部分を占める乳腺を摘出しないと小さくならないからなのです。

確かに、胸のサイズが大きいひとは、皮下脂肪の比率が小さいひとより高い傾向にあります。

乳腺は脂肪よりも硬くて、しっかりした組織なので、脂肪吸引で簡単に吸いだして取り出すことができません。

特に、FTM(male to female)でホルモン注射で男性化している外見などからであれば、いったん躊躇される場合があるかもしれませんが、まだ男性的でない女性に見られるケースだと、単なる乳房を小さくしたいだけだなと思われる、または勘違いされるせいなのかもしれません。

このように、「脂肪吸引で胸を小さくする」と「胸を平らにする」ことはまったく別のことなのです。

当然、ふくらみは取れるわけがないので、胸オペに精通している医師によく相談することが大切です。

手術方法は実際にどのように決めているの?

胸オペの手術方法の違いは、胸の下垂の程度によって決まります。

現在の乳房の皮膚のたるみ状態、下垂の程度が、手術方法を決める上でとても重要になります。

胸の状態によって、それぞれの手術方法を下記で詳しく説明していきます。

手術方法を決める3つの基準

    • 胸のボリューム、サイズ

乳房が大きいからと言って、即、手術跡のキズが大きく目立つ方法しか選択できないと落胆することはないです。

実は、条件によっては、形や大きさだけでは判断ができないのです。

    • 下垂の程度
    • 皮膚の弾力性

皮膚の弾力性は、皮膚をつまんでみて、簡単に伸びてしまう感じだと弾力性がない皮膚ということになります。皮膚に妊娠線のような、しわがあると要注意です。

手術方法の選択は、大きさ、ボリュームでなく、下垂の程度(どの程度垂れているか?)、そして、皮膚の弾力性(皮膚が伸びるか?)でほぼ決まります。

大きくても、皮膚の弾力性さえあれば、垂れていないはずです。

乳房の下垂の程度の分類

下垂の程度はいろいろです。FTMの場合は、あまり細かく分類する必要はありません。乳房のイラストを載せましたが、この分類で十分です。

イラストは、乳房を真横から見たところです。ほぼどれかに当てはまるはずです。腕を下げた状態で自分のを見てみましょう。

下垂の程度:①、②なし、③微妙、④弱⑤強

イラストでは、乳房のアンダーバスト上に薄い水平ラインを引いています。

※アンダーバスト:乳房の一番下とお腹の一番上の境界線で、胸のふくらみが立ち上がるところで、付け根に当たります。

次に、下垂の程度を正面から見たイラストです。

下垂している場合は、アンダーバストが下乳で隠れてしまいます。

乳房の下垂の程度で、術後にどれだけの皮膚のたるみが出るかわかります。

手術方法は、自分の胸で確認できる

アンダーバストのラインより乳房が下にも、はみ出している状態がいわゆる「下垂」しているといいます。

乳房の下垂の程度もいろいろタイプがあるので、詳しく説明していきましょう。

イラストの①、②は、乳房のサイズだけの問題で、大きく分けると4タイプしかありません。

乳房の下垂の程度をえんぴつで知る方法

乳房の下垂の程度をpencil testという自己判断できる方法があります。

鉛筆を乳房下に挟み込み、手を離すと落ちない人は下垂していないひと。落ちるか落ちないかの人は、下垂の程度が軽いです。

まったくペンが落ちないで、乳房下で隠れる人は、下垂が強いひとです。

下垂が重度かは見ただけでもわかりますが、pencil testでは鉛筆はまったく落ちないし、アンダーバストの奥に隠れてしまいます。

自分に適した手術方法は?

乳房の下垂によって手術方法が変わります。自分の下垂度をイラストと照らし合わせてください。

 

  • ①☞胸が小さい、または、大きくても下垂していない胸
    大きくても、皮膚に弾力性があれば、下垂していないこともあります。
    その場合でも、U字切開が可能です。
  • ②☞胸の下垂が微妙
    若くて、皮膚に弾力性があれば、少しの下垂の程度であっても、U字切開を選択した方が良い結果を期待できます。
  • ③、④☞胸の下垂が強い
    ・皮膚の弾力性に乏しいことがほとんどです。
    ・胸の下垂の程度により、手術方法が異なります。
    ・各手術方法にメリット、デメリットがあります。
    乳房の下(アンダーバスト)に長い目立つキズができます。巾着状に縫うので、乳輪の周囲に放射状にしわを生じます。乳房の下(アンダーバスト)に長いキズを生じる上に、乳輪を移動する必要があります。
    この場合、乳輪の壊死(血行が乏しくなるため腐る)頻度が高くなるデメリットがあります。
    乳輪の壊死をできるだけ抑えるために、段階を経て、2回に分けて手術する方法もあります。

胸オペで、胸を平らにするときに問題になる点

胸を平らにするには、乳腺を取り除かなければいけないのですが、取り除けば必ず平らになるものなのでしょうか?

胸の形がお椀型している場合は、ふつうに平らになるのですが、問題は下垂または垂れているひとです。胸が大きいと加齢、重力に伴って下垂していきます。

これは、一般女性にも当てはまることです。乳房が垂れないようにバストアップするようなブラまで開発されるわけです。

一方、FTMのひとは、まさかバストアップするようなことはしません。むしろ、普段洋服を着ているときに、胸のふくらみがわからないように胸をつぶします。

このつぶすという行為は、胸の下垂をさらに助長させてしまい、下垂してしまった胸は、一般的なキズの小さい方法、U字切開では、術後に皮膚が余ってしまいます。

手術方法を選択する上でのアドバイス

手術方法に関しては、ご本人の希望する方法を尊重します。たとえば、現状の胸は下垂があるけれども、どうしても目立つキズ跡は避けたいので、とりあえずはU字切開を第一選択としたい。

その結果、たるみは残るものの、結果に納得し、許容範囲内であれば治療終了となります。また、やはり余ってたるんだ皮膚をどうにかしたい場合、たるみ皮膚切除を行うといったステップを踏んでもよいでしょう。

それぞれの手術方法については、メリット、デメリットがあります。こちらから「この手術方法しかない」などと強引には勧めませんので、ご本人が納得いく形で手術に臨んでいただきたいと考えています。

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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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