性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

睾丸摘出の適応

睾丸を摘出すると、男性機能、性欲などが衰えます。
睾丸摘出は、GIDの方はもちろんのこと、男性的機能を閉ざす役割もあります。

性同一性障害GIDの方は、診断書が必要となります。

諸事情で、性欲を抑えたい場合もご相談ください。
・勃起するのが嫌 ・過去に性犯罪を犯したことがある ・浮気性が治らない ・DV(家庭内暴力)
・性犯罪再犯防止など
これらの場合には、元に戻せないので手術する利益がその他を上回るときに行わなければなりません。
来院時には、十分に手術後のデメリットをお話します。

睾丸摘出後の症状

・不妊・性欲の低下、消失、勃起障害
(バイアグラ等ED薬でも改善することはできませんが、男性ホルモンを投与すると改善します)

・骨粗鬆症・・・すぐには症状はでません。また、絶対なるというわけではありません。
今後心配であれば、整形外科で骨密度を測るとよいでしょう。
若いうちは平気かもしれませんが、中年以降は注意が必要です。

・精子は作られませんが、原則勃起障害のため、射精が困難になります。
摘出後しばらくは勃起することもありますが、男性ホルモンが断たれているので、
時間が経つとともに勃起しにくくなります。

・勃起させ、射精ができれば精液は若干でます(精液の半分以上は、前立腺でつくられるからです。)

・いわゆる男性更年期障害として、不安、いらいら、うつ、筋力低下、疲労感などは起こりえます。
・陰嚢(ふくろ)は、年数とともに縮む傾向にあります。
そのため、数年後性転換手術SRSを行う予定の場合、陰部に使う皮膚が少なくなることもあります。
気にしていることがあればお知らせください。

睾丸摘出の手術方法

一般的に睾丸は、①陰のう(いわゆる袋)から摘出します。

メリットとしては、傷口は1か所(約3cm弱)でよく、手技的にも簡単。
デメリットは、精索(睾丸とくっつている動脈、静脈、精管(精子の通り道))の断端が触れること。
通常でも、よく触ると索状物が触れるのがわかりますが。

男性化を絶つという目的だけであれば、触れようが触れまいが関係ないという人がほとんどです。
ただし、どうしても触れたくないという人のために陰嚢からではなく、鼠径部(足の付け根付近)からの手術も可能です。

②鼠径部からの摘出
・メリットとして、陰のうから断端がほぼ触れることはない。
・デメリットは、ソ径部(陰毛がはいている両端)を左右それぞれに約3cmのキズができること。
ただし、数か月経つとわかりにくい場所でもあります。
費用は、陰のう部より摘出するより少し高くなります。

睾丸摘出時の麻酔方法

陰嚢から摘出時の麻酔

局所麻酔で行う場合の手術中不快、痛みを感じるのは、以下2点です。
①睾丸を袋から出すとき、睾丸を少し引っ張る時→お腹に若干痛みを感じます
②精索を糸で結ぶ時(精索を切る前に結びます)

※手術はゆっくり話しかけながら行い、約60分です。
・手術中、最初から最初まで何もわからないうちに終わってしまいたい場合は、静脈麻酔をお勧めします。
・鼠径部から行う場合は、硬膜外麻酔(腰からの麻酔)と静脈麻酔を併せて麻酔を行います。

キズは1か所のみ。抜糸する必要がない糸で縫います。

下腹部から睾丸摘出を行う場合の麻酔

硬膜外麻酔と静脈麻酔を併用して行います。
硬膜外麻酔をしなければいけない理由は、下腹部を左右切開しないといけないこと、お腹の手術は、局所麻酔だけでは、痛くて手術にならないからです。

睾丸摘出後の注意点

術後2日間圧迫固定となります。手術終了後、陰のうをテープで巻きます。
2日後(48時間後)にご本人がその圧迫を取ります。こわくないです。

圧迫を取り除いたのちシャワー可、1週後より特に問題なければ入浴可とします。

糸はそのうちぽろぽろ取れていきますが、どうしても気になる場合は来院していただければ取り除きます。
(術後1週間後以降)

<麻酔方法の補足>
睾丸摘出は、基本的に局所麻酔のみで行うことができる手術ですが、よくネット上では「かなり痛くてたいへんだった」という感想がいくつかあります。

確かに、麻酔をするときは、浸みるような痛みを生じるのですが、その後は個人差はありますが、あまり痛くないと思います。麻酔の注入方法にコツがあり、たいてい痛がる場所は決まっていますので、そのコツさえ知っていれば、大丈夫なはずなのですが・・・。

術前に少しリラックスする筋肉注射をすることもできます。

まとめると、麻酔には次の方法があります。
・睾丸の局所麻酔のみ・睾丸の局所麻酔+笑気麻酔(酸素と軽いガス麻酔です)
・睾丸の局所麻酔+筋肉注射・睾丸の局所麻酔+筋肉注射+笑気麻酔のバリエーションで選択できます。
上記費用は、追加料金なくできます。
ただし、手術中まったく意識ない状態で行いたい場合は、静脈麻酔は5000円プラスになります。

どのような状態で行いたいのかお聞きして決めます。

いずれも酸素は手術中マスクしていただきます。
その他、心電図、体内の酸素濃度測定は必須です。

<遠方の方>
当日そのまま帰ることはできますが、心配な方は近隣ホテル(ご紹介します)に泊まっていただき、
翌日問題なければ帰宅という選択もあります。

<料金>
220,000円(陰嚢から)
※静脈麻酔をご希望の方は、5,000円追加となります。
325,000円(下腹部から)
※下腹部からの場合の麻酔は、硬膜外麻酔+静脈麻酔となります。
(麻酔込みの費用となります)

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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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