性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

MTFのための女性ホルモンの種類

女性ホルモンは、生理的には卵胞ホルモン(エストロゲン:E)、黄体ホルモン(プロゲステロン:P)があります。
MTFの場合、女性のようにこれらのホルモンが分泌されないので、定期的に取り込む必要があります。

筋肉注射

卵胞ホルモン(エストロゲン)を基本として治療します。
適時必要であれば、抗男性ホルモン作用のある黄体ホルモン(プロゲステロン)

例:ペラニンデポーまたは、プロギノンデポーをいずれも10mg(必要に応じて20㎎(2A))を2週に1回のペースで治療します。持病がある場合は、5mgで治療することもあります。

内服

エストロゲン製剤と結合型エストロゲン製剤があります。

エチニルエストラジオールはお勧めしていません。
理由:長期に内服すると、血栓を生じる可能性がかなり高くなります。外国では、あまり処方されていません。

一般的に40歳以上の方は、静脈血栓症を来しやすいため、内服薬はお勧めできません。

ジェル、パッチ

ジェル:ディビゲル(1日1回)、パッチ:エストラーナ(2日に1回)
エストロゲン貼り薬とジェルの使い分け

MTF女性ホルモンの副作用

静脈血栓性

エストロゲンは、肝臓由来の凝固因子を増加させるため、血栓の危険を増大させます。特に、飲み薬である「エチニール・エストラジオール」は高頻度に血栓ができやすいので注意が必要です。名前が知られている薬としては、「プロセキソール」があります。

男性ホルモンを抑制する作用が強いのですが、飲んでいる方は注意してください。海外では、2001年にこの薬はMTFに使わないほうがよいとされています。

GnRHアナログと女性ホルモンの飲み薬を長期に服用している60人に1人の頻度で、血栓を生じるとされる報告されています。

特に女性ホルモンの飲み薬は、海外のネット通販でも比較的手に入りやすく、自己判断で飲んでる方も多いので是非注意していただきたいです。

エストロゲン経口薬開始後の1年間の間に起こりやすいとされています。MTFの静脈血栓の発生頻度は、2~6%と言われます。そのうち1~2%のケースで肺塞栓で死に至るとされています。ちなみに、通常の若年者の発生頻度は、0.005~0.01%ですからかなり高い頻度です。

MTFのエストロゲン投与の静脈血栓の発症率は、閉経後に女性ホルモン投与している女性の2,3倍です。(60歳以上のホルモン療法を受けている静脈血栓の発症率は、0.1%です)

血栓を生じると治療のモニタリングとしての「D-dimer」の指標で治療をするのですが、現在特に症状がなければ、この検査をしても意味がないとされています。

D-dimerの値で、将来的に「血栓」ができるかもしれないという予測はできません、黒か白かしか判断ができない検査です。

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その他女性ホルモン投与での注意事項
・肝機能障害
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プロラクチノーマ
・前立腺がん

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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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