術後に起こりうる合併症
胸オペも一般的な手術とは変わりなく、合併症をゼロになるよう日々気を引き締めて行っていますが、それでも、起きてしまうことがあります。
他の一般的な胸部手術と少し異なります。特徴的なものをご紹介します。
そのため、術後に起こりうることを理解していただければ、慌てずにすみます。少しでも理解していただくために、解説していきましょう。
血腫(けっしゅ)
胸オペの血腫は、術後にもっとも起こりやすい合併症です。
これは、ドレーンを入れていても、バンドで圧迫しているにもかかわらず、頻度は高いとされます。
術後の再出血で、乳腺を取り出した空間内に、血液が溜まることをいいます。ほとんどが手術当日に起こります。
大きい血腫を放置すると、皮膚が圧迫され血流が悪くなるため、のちのち乳頭、乳輪、皮膚の壊死、感染などのトラブルを起こすので、必ず緊急的な処置が必要になります。
症状は?
片側に起きることが多く、両側に起こることはほとんどありません。
血腫が生じた側に、冷や汗をかくほど、皮膚が張った強い痛みを生じます。
痛みに伴いドレーン内の出血量も短時間で多くなります。
原因は?
・麻酔から覚め、動き出すと血圧が上がり、血圧が低い状態で出血しなかった場所からの出血
・不必要な動き、息むことによる出血
治療は?
少なめの血腫であれば、ドレーンを数日間の留置を続けます。
大きい血腫のときは、ドレーンだけで対処できません。
乳房内のどこかの場所から再出血の可能性があるため、出血を止めて、血腫を取り除きます。
予防は?
手術当日から翌日にかけて、痛みがないからと言って、不必要に外出はせず、自宅、ホテルで安静に過ごすことが大切です。
乳房内に体液がたまる
これは、胸オペのうち2番目に多い症状で、たいてい、術後1週以降に症状があらわれることが多いです。
この体液の正体は、「浸出液」と呼ばれるもので、ケガをしたときに生じる「汁」に近いものです。
一般的には、「水」が溜まるといいます。
漿液腫seromaとは?
この体液の正式名称は、漿液腫(しょうえきしゅ)、seroma(セローマ)といわれています。
症状
血腫とは違い、痛みを伴わない乳房のふくらみを生じます。
水が溜まっているようなことから、お腹などの脂肪が付いている場所の皮膚を圧すより、より柔らかく、タプタプした感触があります。
原因
原因はいろいろ言われていますが、血腫を生じた場合、皮下脂肪が少ない場合、広い空間ほど体液がたまりやすい傾向にあります。
予防
乳房内の組織がきちんとくっつかないために起こる可能性がありますので、
- 不必要な動きはしないこよです
- バストバンドを不必要に着けたり、外したりしないことです
乳頭・乳輪の壊死のリスク
原因は、乳頭、乳輪への血行が悪くなったことにより起こりやすくなります。
胸オペの手術方法の違いによるもの
手術方法により壊死の頻度が異なります。
- 乳輪の下半周を切開するU字切開では、まず壊死を起こしません
- 乳輪の周りをドーナツ状に切開する方法、乳頭・乳輪を移植する方法では、どうしても血行が悪くなります
タバコ、喫煙
タバコに含まれるニコチンは、血管を収縮させ、血流がわるくなります。
最近流行りの、iqos(アイコス)も同様にニコチンを含みます。
☞胸オペ前にはタバコをやめた方がよい理由
糖尿病(高血糖)
主治医とよく相談し、できるだけ血糖コントロールして、手術に望むようにします。
理想的は、HbA1cを6.0以下を目指してください。
キズの治りが悪い・感染
胸オペをされる方は、若い方が多いので頻度は少ないです。
キズの治りが遅いひと
- 糖尿病
- ステロイド内服
- 免疫が低下している状態
キズが思ったよりきれいにならないひと
- ケロイド体質
- アトピー性皮膚炎
合併症ではないその他の症状
胸部・輪郭の左右差
漏斗胸
胸部の中央がVの字のように凹んでます。
肋骨の変形
手術前には乳房のふくらみのため気がつかないことがあります。
- 片方の胸部だけ全体的に突き出ている
- 一部の肋骨のみが飛び出ている
術後の胸の修正
海外のデータによると、手術後になにも合併症がないにもかかわらず、整容的に修正する必要があるひとは約25%いるようです。
たいてい、脂肪吸引する程度で、乳頭、乳輪縮小の手術も含まれます。
皮膚のたるみが少し生じそうな場合は、最初の手術のときに脂肪はできるだけ残すことが原則です。
理由は、皮下に脂肪を残すことにより、皮膚が時間ととも、たるみが若干収縮し、皮膚が馴染み思ったほどたるまないこともあるからです。これは、弾力性のある皮膚ほど回復しやすいです。
短期間での急激なダイエットでは、顔やお腹に皮膚のたるみを生じてしまいますが、時間をかけてダイエットすると皮膚にたるみが生じないことと原理は同じです。
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