性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

MTFが求める豊胸手術とは?

豊胸手術を求めるMTFは、出まれたときに割り当てられた性別と現在自分が思う性別との違いのために苦痛を経験する可能性があります。

多くのMTFは乳房の成長を刺激するためにエストロゲンを使用していますが、結果として生じる乳房の大きさが十分であると感じないかもしれません。パッド入りのブラジャーを着用し続ける人もいます。

その他のひとは、胸の外観を変更する手術を受けることを選択します。性同一性障害の人たちは自分の体に違和感を持ち、自分のニーズに最も合った個々の選択をする必要があります。

胸の大きさを増やし、胸の形を改善する手術を女性化乳房手術、豊胸手術、胸部または乳房形成術とも呼ばれます。一般的にはシスジェンダーが行う豊胸手術と同じです。

豊胸手術は、乳房組織の下に乳房インプラントや組織エキスパンダーを挿入する必要があります。いくつかのケースでは、脂肪吸引をして胸に注入することもできます。

1 MTFの豊胸の特徴

MTFのひとは、通常、豊胸をする前にホルモン治療をまず開始しますが、満足を得られるほど胸を十分に大きくさせるには、エストロゲン治療だけでは限界があります。

最終的には、大多数のMTFのひとが外科的に胸を大きくすることを選択し、豊胸する率はMTF集団で最大67%と海外では報告されています。

重要なことに、豊胸はMTFに与えるプラスの影響がいろいろあります。単に美容目的だけでなく生活の質も改善するからです。

女性化された胸は、MTFのひとたちが公私ともに生活の中で望ましい性別を提示する一つの方法であり、豊胸は一般的にMTFのひとが追求する最初の、時には唯一の外科的処置であることは驚くべきことではありません。

MTFに対する豊胸手術は、生まれつき女性である人に対して行われる豊胸手術と変わりがありません。

通常は人工の乳腺バッグ(インプラント)挿入が行われますが、自家脂肪注入術が行われることもあります。

一般的に、MTFの豊胸は、通常と違いちょっと大きくしたいだけでは済まないケースがあります。そのため、豊胸バッグが大きくなりがちです。ただし、医師から見ると大きすぎて、「不自然」と思っても、MTF当事者からするとそのようなこともないようです。

「もうすでにMTFとわかっているから、不自然でも洋服からの見た目が重要」という方も多いようです。

ただ、やはりMTF当事者に豊胸手術を行う側から知っていただきたいこともありますので、そのギャップを埋める意味でも次のことにも留意してみてください。

2 リアルな女性が行う豊胸と違うMTFの場合の注意点

男性と女性の胸の間には顕著な違いがあります。これらには、乳腺組織の量の違いだけでなく、アンダーバストと乳輪・乳首の距離が短い、乳首が小さいなどが含まれます。

・大胸筋が生物学的な女性より発達していることが多いので、身体に合っていないサイズの豊胸バッグを入れると鳩胸っぽくなる場合があります。

・いわゆる胸がまな板状態で行わずに、ある程度女性ホルモンで多少膨らみを持たせてから行うと自然らしさがでます。

・豊胸シリコンバッグの寿命は、半永久的ではありませんので、10年単位で入れ替えの必要があります。

・MTFの場合、女性ホルモンも補っているので、通常の男性より乳がんの発生率は高くなるといわれます。

3 豊胸手術の合併症

・被膜拘縮(カプセル拘縮)…豊胸バッグは異物ですので、身体の防御反応の結果として、豊胸バッグの周りに被膜というものができます。

この被膜が経時変化として、硬くなってくることがあります。

拘縮を起こすと典型的な症状は、触るとかなり硬くなる、見た目がボールが入っていそう、乳房が動かないなどです。

・その他、一般的な手術での合併症(例;出血、感染など)

4 豊胸手術後のフォロー

・豊胸バッグの中身は、ゲル状シリコンです。従来の生理食塩水と違い(破損すると吸収し、左右差で気が付く)、破損しても気が付かないことが多いです。そのため、2年おきにMRI検査を行うことをお勧めします。

・豊胸後は乳がん検診は行ったほうがよいでしょう。

ただし、マンモグラフィーは断られるケースがほとんどですので、MRI検査を行うとよいです。ご希望の方はご紹介します。

当院では、通常の豊胸シリコンバッグと再生医療を利用した幹細胞を含む脂肪注入法とが選択できます。

特に脂肪注入に関しては、現在豊胸シリコンバッグを入れていて、異物感に悩まされている方は、脂肪注入法に切り替えることもできます。

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自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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