執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

新型コロナと今後のgidのホルモン治療

これを見ている方は、きっとホルモン治療をしているかと思います。新型コロナ(ワクチン含む)とホルモン治療との影響についての海外医学論文があるか調べたのですが、1つしかありませんでした。

肝心のホルモンとの影響は、2,3行の記載しかなく、はっきりした答えはありませんでした。コロナ自体がよくわかっていないから当たり前ですね。

要約したものをご紹介します。当クリニックに通院している方は、コロナワクチンとホルモンの影響についてのパンフレットを配布していますので、来院した際にお渡しします。

新型コロナウイルスと性差

COVID-19(新型コロナウイルス)の感受性と経過の良し悪しは、性差に関係があるとされています。

生物学的性別sexの差は、自己もしくは、外界からの抗原(ウイルス、細菌など)に対する免疫反応に影響を与えます。

その結果、自己免疫や感染症の重症度など、そして、新型コロナ感染だけでなく、ワクチンに対する反応にも性差が生じます。


世界的に見ても、男性の感染率は、女性より1.7倍高いことがわかります。

Considering how biological sex impacts immune responses and COVID-19 outcomes
(Nat Rev Immunol. 2020 Jun 11 : 1–6.)より

コロナ感染には、女性ホルモンが有効?

こうした観察結果を受けて、新しい研究では、新型コロナの治療として、性ホルモン、特にエストロゲンとプロゲステロンの安全性と有効性があるか検証されています。

これは、動物研究からのいくつかの研究結果があります。

すなわち、新型コロナウイルス感染マウスの研究では、エストロゲン投与したマウスは、炎症反応、ウイルス力価、罹患率、および死亡率の低下をもたらした結果出ています。

注)この研究で使われたエストロゲンは、パッチと同程度の濃度です。

一般的に治療に使われる濃度では、血栓を引き起こす可能性のある一般的な濃度での研究ではないので、実際に女性ホルモン治療しているから大丈夫なわけではありません。

gid治療の制限

このコロナパンデミックの進行に対する解決策を見つけるには、これらの研究結果が不可欠です。

しかしながら、トランスジェンダーコミュニティは、新型コロナの人口統計データ、調査研究、および公衆衛生の監視システムから除外されています。

生物学的な性別やホルモン剤の使用がコロナウイルスにどのような影響を与えるかについての理解が結果的には制限されている状態です。

gidのホルモン療法と新型コロナウイルス

現在、性別適合移行に際し、性ホルモン治療がされています。

MTFのホルモン治療には、エストロゲン、プロゲストゲン、および抗アンドロゲンが含まれており、特徴的な女性化をもたらします。

FTMのホルモン治療には、エストロゲン産生を抑制し、男性化のためにテストステロンが使用されます。

動物モデルでは、エストロゲン受容体拮抗薬の有望な研究結果を考慮すると、女性ホルモン治療を受けているMTFは、重度の新型コロナウイルスの感染からの防御を高める可能性もあります。

一方、男性ホルモン治療を受けているFTMは、コロナ感染リスクの増加に直面する可能性があります。

しかしながら、この仮説は他の生物学的および行動的要因により、複雑になる可能性があります。

例えば、シスジェンダー女性における2つのXの性染色体の存在は、病原体認識および自然免疫の活性化における重要な部位で、外界から抗原が入ってきた場合に、免疫を作動させるTLR7があります。

そのため、MTF(トランスジェンダー女性)における1つのX染色体よりもウイルス感染に対する良好な免疫応答を提供する可能性があります。

※女性は、X染色体は2本、男性はX染色体を1本持っています。
X染色体を1本より2本持っている方が、感染の防御反応が強いとされていますが、ホルモン治療をすることにいろいろな複雑な条件により、仮説が正しいかわかりません。

 

ホルモン治療中のコロナワクチン接種についてどう考えるか?

MTF、FTMともにホルモン治療をしている方に対しては、コロナワクチンは打つべきか打たないべきか?今のところ、だれも確実なアドバイスができません。

しかしながら、新型コロナウイルス(COVID-19)の特徴は、全身性の血栓症を起こすことがわかっています。

ワクチン接種後数日内に血栓での死亡例の評価された全例では、いずれもがワクチン接種との因果関係は認められていません。(令和3年5月28日現在、厚生労働省の報告)

ちなみに、死亡原因がワクチン接種と因果関係があれば、補償金が4000万ほど出ます。

怪しいのことに、死亡後、十分に検証するわけでもないのに、死亡後すぐに因果関係はないと断言してしまうところに闇を感じてしまうのは、ぼくだけでしょうか?

統計的には、ひとはいつ死んでもおかしくないわけですが、ワクチン接種後の死亡原因の一部には、特に基礎疾患がない健康な若い方で、ワクチン接種後の数日以内に亡くなっています。

その原因は、主にくも膜下出血、脳出血など心臓血管系です。(有害事象は除く:例えば、接種後にお風呂場で溺死したなど直接的には影響がないであろう事実)

くも膜下出血は、脳血管に症状に現れない小さい動脈瘤、動静脈奇形があること多いので、それが何かしらワクチン接種後の血栓と関係があるのではないかと推測されます。

海外の医学論文を読んだ限りですが、新型コロナウイルス(COVID-19)の特徴は、血栓症との関連性が高いことがわかっています。

政府は、ワクチン接種を煽り、職場では同調圧力も少なからずありますが、現在、ホルモン治療をされている方は、ワクチン接種する利益が、コロナにかかるリスクを大きく上回ると思うのであれば、接種してもよいと考えてはいかがでしょうか?

以上、まとめると、ホルモン治療をしている場合は、以下のことにも注意していただきたいと思います。

現状、GIDのホルモン治療とコロナワクチンについての研究のデータがまったくない状態なので、あくまでも仮定、推測であることをご了承願います。

MTFの女性ホルモン注射の治療中の血栓症の予見はできないので(血液検査でもわからない)、他のひとよりリスクが高いと認識したうえで、ワクチン接種を受ける。
(女性ホルモンがコロナウイルスに有効かもしれないという報告がありますが、あくまでも、低濃度のパッチでの研究結果ですので、筋肉注射は不明です)

FTMの男性ホルモン治療は、血液が固まりやすくなっている可能性があるので、ワクチン接種前には、「多血症」の確認をしておいた方がよい。
(ヘマトクリット50以上は、ワクチンを当面見送りが無難)

いずれにせよ、仮にワクチン接種を受ける場合は、ホルモンを打った直後ではなく、しばらく期間を開けてください。1サイクルホルモン注射をお休みしてもよいくらいです。限りなく、ホルモン治療との影響が避けられます。

最後に。死因の原因が脳出血であるため、ワクチン接種前に脳動静脈奇形もしくは、小さい脳動脈瘤があるか脳ドッグを受けることをお勧めします。

ワクチン接種を急ぐ必要はありません。年末に、一般の人が打つ頃には、今年の最初にワクチン接種した医療従事者のワクチン効果もなくなります。

☞海外医学情報
Involvement of Cisgender and Transgender Individuals in Studies on the Impact of Hormonal AIDS Patient Care STDS
Therapy on COVID-19
2020 Sep;34(9):367-368.

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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