性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

トランスジェンダー、性同一性障害GIDの有病率は実際にはもっと高い?

疫学的に、トランスジェンダーの真の有病率を確立することは、サンプリングに誤差を生じるためにたいへん困難です。

有病率を確立するのは難しいのは、対象者の基準、すなわち、その人が既に性別適合手術を受けているのか?、ホルモン治療を受けているか?、または、当事者が医療提供者(医師など)に性別違和感を示しているかどうかによっても変わってくるからです。

これらの誤差が生じるため、今までに推定された有病率がこれまで低く見積もられてきた理由の1つに、一部の性別違和のある人(すなわち、不快であることなく、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別に自分を関連付けること)が医療機関を受診することがないからです。

性別違和のあるひとのすべてが医療機関を受診、もしくは治療しているわけではありません。

有病率推定の限界

これらの限界を克服するために、最近発表された有病率の推定は、集団における調査を用いて実施されています。

Arcelusらは、過去50年間に報告されている有病率に関して分析したところ、トランスジェンダーの有病率は10万人当たり約4.6人と推定しました。

そのうち女性は6.8人、男性は2.6人でした。報告された有病率はかなり変動しており、研究を対象とした方法論および診断分類、そして研究が行われた年と国も違うため、これらの要因によって有病率もかなり異なってきます。

これらの分析結果から、過去50年間に報告された有病率は増加傾向にあります。医学文献で報告されたトランスジェンダー、性同一性障害GIDの全体的な有病率は増加しています。

しかし、それでもまだ非常に少ないと考えられています。この理由は、主に研究を対象とした当事者が医療機関にアクセスしているひとに基づいているだけで、一般集団における有病率の全体像は把握できていないからです。

有病率が高くなっている理由

Floresらは、米国全土における人口調査を利用し、米国の成人の総有病率は0.6%であることを報告しています。トランスジェンダー、性同一性障害GIDであると認識している集団、性別違和の有病率は過去20年間に世界中で増加しています。

(※2015年の電通LGBT調査によると、トランスジェンダーは、0.7%と報告されています。このときの調査対象者は20~59歳の個人900人(LGBT層該当者500人/ストレート該当者400人)で、調査対象エリアは日本全国、調査方法はインターネット調査でしました。必ずしも医療機関を受診している集団ではありません)☞LGBTQの発症率

増加している理由として考えられるのは、社会の開放性の高まり、法律の改正、メンタルヘルスや医療の提供者、メディア、ソーシャルメディアのトランスアファーマティブ・アプローチのおかげで、これらの関係者が自分の性的違和の不快感を打ち明けられる環境が整っていること、友人などに自由に助けを求めたりすることができるようになったからです。しかし、個人間または個人自身の問題、その他の原因、変化もあり得えます。

病気による性別違和の有病率はデータには含まれない事実

注目すべきことに、ステロイドホルモン合成における遺伝的病気の問題は、性別違和の有病率には含まれていません。

先天性副腎過形成、完全または部分的アンドロゲン不感受性症候群、またはその他のまれな異型などの性発達障害を有する人は、性別違和の診断基準を満たしていないからです。

しかしながら、先天性副腎過形成の女性は、性自認が男性であったり、性的指向が女性である可能性が高いことが報告されています。

【参考文献】
Systematic review and meta-analysis of prevalence studies in transsexualism
European Psychiatry 2015,Volume30,Pages 807-815

【関連サイト】
MTF、FTMの発症頻度はどのくらい?

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

当院は、主に性同一性障害専門クリニックとして、GID学会認定医によるgidに関する診断、ホルモン治療、手術、そして、性別変更までのお手伝いをさせていただいています。
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