性同一性障害を含む性的マイノリティーに関する精神的健康、とくにうつ病、自傷行為など、どの年齢時期に頻度が高いのか?などについての報告発表がありましたので、ご紹介します。
LGBQの精神の健康は、一般に比べ頻度はどの程度高いのでしょうか?
LGBQ※などの性的マイノリティーにおける精神的健康に関する人口ベースの研究はほとんどありません。
性的マイノリティーの青年と一般青年における抑うつ症状の軌跡を10歳から21歳にかけて比較し, 自傷行為については16歳から21歳までを検討しています。
※レズビアン(L:女性同性愛者)、ゲイ(G:男性同性愛者)、バイセクシュアル(B:両性愛者)、クエスチョニング(Q:自己の性認識や性同一性障害、性的指向が定まっていない状態の人)
この研究では、16歳のときに性的指向を報告した両親と子供の出生からデーターを得て、4828人の青年を対象にしています。抑うつ症状は、10歳と21歳の間で感情アンケート (sMFQ) で評価しました。また、自傷行為におけるアンケートも16歳と21歳の年齢で行っています。
10歳時では、抑うつ症状は、異性愛者より性的マイノリティーのスコアが高いですが、年齢とともに上昇し、その差が大きくなります。
性的マイノリティー群はヘテロセクシュアル群(対照群)に比べて10歳時の抑うつ症状の重症度がより高くなります。
18歳でうつ病が異性愛の2倍
18歳時においては、性的マイノリティー群は異性愛群に比べてうつ病のリスクが約2倍でした。
LGBQ※などの性的マイノリティーの若者は異性愛者(ヘテロセクシュアル)の若者に比べて自殺目的での自傷経験が約4倍で、
早い人では10歳から抑うつ症状が出現する
16歳と21歳の時点では、自傷行為を経験しているのは、一般青年よりも性的マイノリティーにおいて頻度が高いです。
21歳までに自殺目的の自傷経験は約4倍
さらに、性的マイノリティー群は異性愛群に比べて、16歳および21歳時に過去1年間に自傷経験があると答えたひとが多く、21歳時には、少なくとも1回は自殺目的での自傷経験があると答えた割合は約4倍でした。
グラフの説明:10、12、13、16、18、19、21歳の各時点で抑うつ症状を評価する質問票short Mood and Feelings Questionnaire(sMFQ:スコア範囲0~26、スコアが高いほど重症)
性的マイノリティー群と異性愛者群とでは、10歳という早期の時期から、抑うつ症状の発症に差が現れています。とくに年少者は、自分は他の人と違う感覚を他の人に十分に表現できないため、小児の精神的健康に悪影響を及ぼしていると考えられます。
また、自身が、異性愛者ではないと認識している若年者は、幼少期から精神的な健康問題と闘っている可能性もあります。
この差は、思春期を通して拡大し、家庭、学校での差別、孤独感、社会的孤立、羞恥心、不安、拒否感などさまざまなストレスに関与している可能性があります。
性的指向が異性愛者と決めつけず、多様なセクシャリティーを尊重する姿勢を示す言葉や質問を用いるべきとしています。
異性愛者と性的マイノリティーの精神的な健康格差は思春期の初期に存在し、若い成人期に始まり、学校生活を通して増加します。これらの精神的な健康問題の予防と早期の介入は、早くから対処する必要があります。
☞医学文献の出典
Depression and self-harm from adolescence to young adulthood in sexual minorities compared with heterosexuals in the UK: a population-based cohort study.
Lancet Child Adolesc Health. 2019 Feb;3(2):91-98.
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