• 性同一性障害GID/性別違和の緩和について、ホルモン治療単独の効果を見極めることは難しいとされます。

ホルモン治療のみの研究が少ないわけ

性別違和に対する男性化、女性化を促すホルモンの効果を評価している研究のほとんどが、性別適合手術(SRS)も受けている当事者を対象にしているからです。

ホルモン治療、手術の両方を実施している場合には、良い治療効果が認められたと、 1961 年から1991 年の間に実施された79 個の研究報告があります。(延べ2000名以上の当事者を網羅した医学文献レビューが報告されています)

1986年以降にGIDに関する手術を受けた人の効果が、それ以前に手術を受けた人よりもよくなったのは、外科的手術の合併症に関する状況が改善されたからであるとされています。

ほとんどのGID当事者において、心理的または社会的側面の改善が報告されており、その範囲はMTFで87%から FTM97%の間で改善が認められています。

スウェーデンの研究でも、同じように改善されたことが明らかになっています。

術後5年のGID当事者のほぼ全員が性別適合手術(SRS)にも満足しており、フォローアップをおこなった臨床医の評価では 86%に全体的な機能の安定あるいは改善がみられています。

ただ、こうした先行研究の弱点は、レトロスペクティブ(後ろ向き)研究であることと、成果の評価に各々異なる指標を用いている点です。

プロスペクティブ(前向き)研究としては、性別適合術(SRS)を望む成人および青年325名を継続的に調査したオランダの研究があります。

ユトレヒト性別違和尺度(Utrecht Gender Dysphoria Scale)で測定したところ、性別適合のための手術(ホルモン含む)を受けたGID当事者の性別違和に関するスコアの平均値に改善がみられます。

身体に関する不満と心理的機能に関するスコアも、ほとんどのカテゴリーで改善し、手術後に後悔したという人は、2%に満たないです。

プロスペクティブ(前向き)研究としては最大規模であるこの調査により、ホルモン治療と手術を組み合わせた場合に性別違和とその他の心理社会的機能が改善されたという、レトロスペクティブ(後ろ向き)研究の結果が追認されています。

ホルモン治療や胸オペをしない場合

性同一性障害と診断をされていても、FTMであれば胸オペ(乳腺摘出、乳房切除)を受けない場合や、ジェンダーXであるFTXがホルモン治療の目的を、反対の性の身体を望まないケースの効果については、さらなる研究が必要です。
ジェンダーXであるFTXは、胸オペを受けれるか?

このようにGID治療が進歩するにつれ、全体的に治療による安定した改善が報告されるようになりました。

以前の成果調査は性別適合手術(SRS)だけに焦点を当ててきましたが、最近では性自認、性役割、身体的適応のありようが多様化しており、フォローアップ調査や成果調査を追加して行なっていく必要があります。