ここ数年で、GIDに関することは急速に認知されるようになってきました。しかしながら、いまだに目に見えない差別、孤立を経験し、社会的暴力にさらされていることもあります。このことから彼らの健康と幸福に悪影響を及ぼしかねません。

現在と過去に報告されたGIDと自殺傾向が高いと報告されています。研究報告によっては、自殺傾向率が多少異なります。

今まではGIDの経験的なサポートがないのに、多くの医療者は、自殺願望者や精神病を扱うように、自殺傾向を見ていました。手術をしてもさらに自殺傾向が悪化するであろうと考えていましたが、実際には全く反対の結果で、性別移行後には改善傾向を示したのです。

1997~2016年までの自殺傾向に関する報告を収集すると、対象者はFTM4625人、 MTF9698人、クロスドレッサー939 人、18歳未満は除外されています。

下図を見ると、MTFの自殺願望はFTMより高いですが(MTF51.7% vs. FTM45.4%)、自殺の試みの頻度がほぼ変わりません(31% vs. 32.3%)。性別不適合の自殺願望(30%) 、自殺企図(25.6%) は、MTF 、FTM より低い結果です。クロスドレッサーの自殺念慮は16.9%と最も低いです。

従来の医学論文のデータを統計的に見てみると、GIDの平均 56% が生涯に自殺願望を経験し、29% が自殺を試みています。一般的な自殺傾向の割合は、それぞれ 0.5% と 3.7%で、GIDの自殺傾向がかなり高いことがうかがえます。

この1年間でさえ、それぞれ自殺願望は一般人口の14倍、試みが22倍高いです。MTFは、自殺願望がFTMより高いですが、自殺の試みはほぼ変化ありません。

また、自殺傾向において、時間とともに低下します。たとえば、過去1年で比較すると、自殺願望 (55%→51%)、特に自殺の試み (29%→11%) と減少しています。一方、自殺未遂は、他の期間よりも、性別移行前よりも低くなります。 (自殺願望36.1%、自殺の試み13.1%)

ただ、性別移行していないグループの累積的な自殺傾向が高いので、生涯に渡って平均すると、自殺傾向が高いことには変わりません。

その原因には、性別移行を望まないひとたちの自殺傾向が少ないことも考えられます。一方、性別移行を望んでいるけれども、経済的、社会的な事情が障害になり性別移行ができないことから、自殺傾向が高いグループもいるからかもしれません。性別移行前までは自殺傾向が高くなりますが、性別移行後にはその頻度は低くなります。

それでも、性別移行に関すること、汚名、性差別などにより、GIDの自殺傾向は生涯でみると、一般大衆より高くなります。

これら研究結果から、GIDに対する医療戦略を取ることができます。例えば、差別と性別移行がうまくいかないことが原因になっている可能性が高いため、性別移行後は自殺傾向の頻度が低くなっていることからもわかります。

そのため医療機関は、性別移行の障害を減らすことが重要です。また、GID当事者もこのようなジェンダークリニックなどのサービスを探し、情報を入手し、準備する必要があります。

GIDの継続的な脆弱性から、性別移行中のストレスを減らすために、アンチGIDの汚名と差別に対して、医療機関はこの集団を強化する必要があります。

これらのひとたちの医療と人権保護を主張する政策や立法措置への支援と参加することも大切でしょう。

※厳密には、若干ニュアンスが違いますが、原著はトランスジェンダーと表記されていましたが、意訳ではGIDとさせていただきました。

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日本国内での大規模なデータはありませんが、「性同一性障害と自殺」精神科治療学25(2)247-251からの針間医師の報告によると、クリニック受診者の統計で、自殺願望は62%、自殺の試みは10.8%と報告しています。
性同一性障害と自殺未遂