執筆者:性同一性障害(GID)認定医 大谷伸久

この質問の答えを出すのは難しいところです。実際に意外かもしれませんが、海外の医学論文でもいつまで治療しないといけないかまでは書いていません。

この問題に答えるためには、まず男性(シス・ジェンダー)の生涯の男性ホルモン濃度の推移(変化)を知った方がよいでしょう。

一般男性の生涯の男性ホルモン推移

年齢に伴う男性ホルモン濃度をグラフに示したように、男性ホルモンは思春期を境に急激に低下していきます。

個人差はありますが、50歳を超えるとさらに低下していきます。
これは、女性における女性ホルモンを思い浮かべると同じような生理的な現象が起きます。
そうですね、女性の場合は、「閉経」です。

一般女性の生涯の女性ホルモン推移

女性も80%以上のひとが50歳を境に急激に低下というより、ほぼカラダの女性ホルモン濃度がゼロになります。

からだに性ホルモンがなくなってしまうのです。

女性の場合は、急激に女性ホルモンがなくなると更年期症状を来し、体調が悪くなるひとがいるので、閉経後もしばらく女性ホルモンを補うひともいます。

しかしながら、80、90歳まで女性ホルモンを補うことはありません。

FTMの男性ホルモンはいつまで治療するればよい?

このように考えると、男性も壮年期になれば、体内の男性ホルモンが低くなることを考えると、FTMの男性ホルモン治療は、一生続けなければいけないということはなく、50,60歳過ぎたら減らしていく治療が、からだ的にも生理的にも理がかなっていることになります。

例えば、20歳代で、性別適合手術のために卵巣、子宮を取った場合には、それ以降も男性ホルモン治療を行うことが望ましいです。

若い時に男性ホルモンを補わないと、骨が弱くなる「骨粗しょう症」になってしまいます。中年になってからまわりの同じ年齢のひとに比べると骨の密度が極端に低くなり、軽い転倒でも骨折しやすくなります。

理想的なFTMの男性ホルモン治療は?

一般男性の生涯の男性ホルモン推移と同じようにするのが理想的です。

  • ①50歳ぐらいまでは、通常通り若い人と同じように注射していてもよいでしょう。
  • ②50歳すぎた辺りから、少し減らし気味に。
  • ③60歳超えたら、男性ホルモンの塗り薬がいいのではないかと思います。

【関連サイト】
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男性ホルモン治療のQ&A

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FTMの男性ホルモン治療について

自由が丘MCクリニック院長の大谷です

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