FTMの胸オペ(乳腺摘出)について

「胸オペって、実際にはどんなことをするの?」「俺の胸は、どんなオペ方法になる?」「オペ後は、痛いから心配だ」「オペのリスクはあるの?」「オペの麻酔の方法は?」など、いろいろな質問にも答えます。

胸オペのことを症例写真やイラストを利用して、分かりやすく解説します。

自分の手術のことだから、胸オペのいろはをじっくり読んでほしいことばかりです。

胸オペとは?そもそも何でそのように呼ぶの?

胸オペとは、乳腺摘出、乳房切除、乳腺摘出などの乳房再建のことで、FTMの人たちによる通称名です。

胸オペはFTMにとって、性別変更までの過程で、ほとんどの人が最初に行う手術です。

海外では、まず初めに行う手術ということで、Top Surgery(トップ・サージャリー)とも呼ばれています。

FTM男性化への第一歩、胸オペの役割

FTMにとって、男性化への初めの一歩で、男性ホルモン治療をしても、若干胸が小さくなることはあっても、乳房の根本的な大きさにはほとんど影響がありません。そのために、初めに行うことが多いことも1つの特徴です。

このため、FTMの場合、外見は男性として見られる、または、男性として生きているのに、女性と思われたりすることも多く、社会的にハンディキャップを持つことがあります。

見た目が男性的で、胸のふくらみに嫌悪感を持つ場合、日常生活でそれが周りにばれないように、バストバンド、通称ナベシャツを装着します。

胸オペは、新しい性別、男性として生活しやすくなるため、そして、より男性としての実生活を体験することもできます。

このように、男性的な胸を獲得することの他にもいろいろなメリットがあると言えます。

FTX(Xジェンダー)も胸オペできる?

FTM以外に、性別に違和感があり、性別変更まで望まないけど、自分のからだに違和感や嫌悪感を持っているFTX(Xジェンダー、中性)がいます。

ふくらみも違和感の1つで、一般的に、ふくらみ=おっぱいは、女性の象徴として考えられているからでしょう。

Xジェンダーだと胸オペできないと思っているひとも多いようですが、FTXも性別違和には変わりないので胸オペも可能です。

胸オペ(乳房切除・乳腺摘出)は、脂肪吸引で行うの?

胸オペは、FTMの方が行う手術で、脂肪吸引だけの単独のオペでは平らになりません。

そのため、胸の大部分を占める乳腺を摘出しないといけないのです。

乳腺は、胸の約70~80%を占めます。

乳房が大きい方は、皮下脂肪の比率が小さいひとより高い傾向にあります。

脂肪より硬く、しっかりした組織なので、簡単に吸いだして取り出すことができないのです。

胸のイラストを見てみましょう。
乳房の構造

乳房の青い点線の場所を摘出します。

まずは、見たくもないかもしれませんが、早速自分の胸がどのタイプか確認してみましょう。

FTMの方は、あまり自分のをじっくり見たこともないかと思います。10人いれば、10人違うので、まったく問題ありません。

胸オペの手術方法の決め方

胸の特徴から術式を決める?

胸オペでは乳腺を全部取り除きますが、それに伴い、術後に皮膚のたるみが余る場合もあります。

現在の乳房の皮膚がたるみ状態、下垂の程度が、手術方法を決める上でとても重要になります。

手術方法を決める3つの基準

  • 胸のボリューム
  • 下垂の程度
  • 皮膚の弾力性

胸が大きいからと言って、即、手術跡のキズが大きく目立つ方法しかないと落胆することはないです。

実は、条件によっては、形や大きさだけでは判断ができないのです。

胸オペの術式の選択はこうして決める

乳房の下垂の程度で、ほぼ手術方法が決まります。

大きさ、ボリュームでなく、ずばり現時点で「垂れているか(下垂)垂れていないか?」どうかです。

胸の下垂の程度の分類

イラストは、乳房を真横から見たところです。ほぼどれかに当たるはずです。

腕を下げた状態で見てみましょう。

乳房の下垂の程度
①   ②   ③   ④    ⑤
下垂の程度:①、②なし、③微妙、④弱⑤強

イラストでは、アンダーバスト上に薄い水平ラインを引いています。
※アンダーバスト:乳房の一番下とお腹の一番上の境界線です。ふくらみが立ち上がるところ。下垂している場合は、下乳で隠れてしまいます。

乳房の下垂の程度で、手術の方法を決めると、術後にたるみが出るかどうかがわかります。

次の項目では、まず、自分の胸の下垂がどの程度か知っておきましょう。

自分の胸の下垂の程度を確認してみよう

アンダーバストのラインより乳房が下にも、はみ出している状態がいわゆる「下垂」しているといいます。

下垂の程度もいろいろタイプがあるので、詳しく説明していきましょう。

具体的な下垂の程度を知る方法

①、②はともに、乳房はアンダーバストの上に位置しています。ボリュームだけの違いです。

②のようにボリュームが大きいからと言って、オペのキズ跡が目立つ方法が選択されてしまうとは限りません。

症例写真は、胸のボリュームがほとんどありません。

③は、下垂が軽度です。pencil testという自己判断できる方法があります。


それは、鉛筆を乳房下に挟み込み、手を離すと落ちるか落ちないかの人は、下垂の程度が軽いです。

④は下垂が見ただけでもわかります。pencil testでは、鉛筆はまったく落ちないし、アンダーバストの奥に隠れてしまいます。


乳輪・乳首の位置がアンダーバストのライン上もしくは、上に位置するひとです。

この場合の手術方法は、乳腺を全部切除し、それに伴った余った皮膚も同時に切除します。

⑤は、イラストでは、乳房のボリュームが小さいですが、下垂の程度が④より強いです。もちろん、このタイプはボリュームが大きいことが多いです。

このように乳房が小さいから、キズ跡が小さい方法でできるとは限らないことがわかります。

下の写真のケースでは乳輪・乳首の位置が、アンダーバストのラインの下に位置しています。この場合、重度な下垂と言えます。

胸オペの方法には、どのようなものがあるの?

胸オペには、いくつか手術方法があるから、各々説明しましょう。

U字切開法について

乳輪の下半周を切開する方法で、手術跡のキズがいちばん小さい方法になります。下垂のない人に適しています。

乳輪が小さくて、乳房にボリュームがあると、時間がかかります。そのため、乳輪のまわりを切ってしまう方法が選択されることが多いようです。

乳輪のまわりを切開

手術跡のキズは、意外に目立ちます。乳輪、乳首の血行が乏しくなるため、組織が腐ってしまうことがあります。

海外では、乳房のボリュームが少しある場合に選択されるようです。

ただし、大きい場合は、時間がかかりますが、U字切開が可能な症例にもこの手術方法が選択されることに多いのにはびっくりします。

タイでの手術にも多く選択されている傾向にあります。キズが目立つため、乳輪が不自然なことが多いです。

乳輪を水平に切開

アジア人には、あまり向いていない手術です。手術跡のキズが目立ちます。

その理由ですが、そもそも乳輪はメラニン細胞が多く存在する場所だからです。

経験的にわかるかもしれませんが、オペのキズ跡は、瘢痕組織として、白いスジとして残るので、乳輪のど真ん中を切るとキズは、結構残ります。

乳輪のメラニン色素は、アジア人は白人より多いため、キズ跡も当然目立ちやすいという特徴があります。

乳房の下縁(アンダーバスト)を長く切開

乳房の下垂が強いひと、基本的に胸が大きい人が多いが、ボリュームがあまり大きくないひともこのタイプに属すひとがいます。

ほとんどのケースで、乳輪はかなり下に位置します。

そのため、乳腺摘出に伴う余った皮膚を切除するだけでなく、乳輪も移動させないといけません。

そのため、乳輪に行く血行もわるくなることがあります。

胸の下垂の程度が、オペの結果にどのように影響するの?

具体的に症例写真を見ながら、解説します。

下垂なしの場合

・イラスト①は、乳腺を全部摘出しても、たるみが出ません。

垂れていないということは、乳房を支える力、皮膚に弾力性があるためにたるみません。

ボリュームがかなりあったときは?

多少の下垂があっても、安易にキズが大きく残る手術を選択するのではなく、とりあえずは、キズの一番小さいU字切開で行うのがよいでしょう。

・②も、多少ボリュームがありますが、アンダーバストより乳房が上にあるので、たるみは出にくいです。

このタイプは、見た目が大きくても下垂していなければ、通常のU字切開、キズが一番小さい方法、乳輪の下半周を切開する方法ができます。

ボリュームがあっても、皮膚に弾力性があれば(皮膚が伸びない)、垂れないからです。ただ、年齢ととも下垂はしてきます。

このタイプは、意外にU字切開で行わず、乳輪を全周に切開する方法を取る病院やクリニックもあります。特に、タイなどの海外で行うケースで多くみられます。

この理由は、海外で発表された胸オペの医学論文が影響しているのではないかと推測されます。

下垂の状態を加味しないで、胸のボリュームが少し大きいというだけで、この手術の方法と決めつけているからです。

下垂がないのに、少し胸のボリュームが大きくても、十分にU字切開できるタイプです。

下垂が軽度の場合

・③は、ケースによって、たるみが出る可能性が高いのですが、皮膚に弾力性があれば、たるみは出にくいでしょう。

※皮膚の弾力性:乳房の皮膚をつまんでも伸びない場合たるみがでにくい、肘の裏みたいに皮膚がつまめてしまう場合は、皮膚にあまり弾力性がなく、たるみやすいといえるでしょう。

若ければ若いほど、皮膚の弾力性はあります。

多少胸のボリュームがあっても、重さに耐えるくらい皮膚の弾力性があれば支えることができるからです。

イラスト①~③は、すべて乳輪の下半分を半周に切り、そこから乳腺を取りだします。

では、実際に②にあたる実際の症例写真を見てみましょう。

<イラスト②にあたる症例写真>
下垂がない場合は、手術の方法は、もちろんU字切開でが第1選択です。

乳腺を摘出しても、それに伴って皮膚のたるみはほぼ残りません。

オペ前
術前

 

オペ後
術後
術後、乳輪が縮むので、一見小さくなった感じがします。

どこから切ったのかわからないぐらいです。

この方法の利点は、キズが小さいことです。

そして、あまり目立たないことです。オペの技術にもよりますが、ちょうど乳輪と皮膚の境界線を切るので、目立たなくなるのです。ただし、ケロイド体質の場合は、目立つこともあります。
たるみ時の手術

皮膚のたるみが出そうな人は、どの手術方法を選択すればよいの?

<①、②、③にあたる手術方法>
⇒通常のU字切開(乳輪の下半分を半周で切開する)で手術をします。

③は、胸の一番下に当たるとところが、アンダーバストにかかるぐらいに下垂しています。そのため多少のたるみが出る可能性があります。

皮膚に弾力性がある場合には、たるみが生じない場合もあります。

この場合のオペのポイントは、皮下脂肪をできるだけ残すことです。残すというと語弊があるかもしれませんが、これは次回の修正手術のための下地つくりです。

初回に皮下脂肪をたくさん取ってしまうと、皮膚が薄くなってしまい、最初から手術結果がたるみを残してしまいます。

脂肪を残すことにより、急激な皮膚の収縮を抑えることができます。

皮下脂肪があると、時間ととも皮膚が馴染むことを期待します。

そのため、この微妙なタイプは、初回の手術で完成というわけにはいかないところが難点です。

ただ、元々からだがぽっちゃりしている方だと、胸に多少のふくらみがあっても解剖学的には自然といえます。

通常のぽっちゃりした男性もしくは中年男性を想像するとよいでしょう。

ただ、これに納得しない方もいます。それは、ふくらみ=胸、おっぱいだからです。

ダイエットをしていくと、お腹の脂肪がなくなれば、それに連動して胸の皮下脂肪もなくなります。

微妙なタイプの実際の症例写真で説明しましょう。
<イラスト③にあたる症例>
向かって右側は、アンダーバストより下にはみ出ているケースです。下垂が進行し始めている例です。

アンダーバストに指が隠れてしまいます。pencil test(+)。

このタイプは若干たるみが出ることが多いので、タイで行う場合は、1回で済ませたいために大きいキズにされてしまうこともあります。

皮膚は、どちらかというと柔らかく、つまめてしまいます。あまり皮膚に弾力性がありません。

<イラスト③にあたる症例写真>

オペ前です。
術前

初回のオペでは、乳輪からのU字切開で行い、乳腺は全部摘出し、脂肪は極力残すようにしています。案の定、右側が少したるんだ感じがします。

でも、心配しないでください。これくらいなら、大きいキズを作らずに、修正できます。

最初から、大きいキズで行わないで、とりあえず、U字切開で行ってみるのがよいタイプです。

ただし、これ以上下垂していると、この方法では難しく、皮膚のたるみを残ることになります。

術後

術後修正
修正術後の写真です。

胸の下垂があるけど、キズは最小限にしたい場合はどうするの?

④、⑤は、必ず皮膚のたるみが生じます。どの方法で皮膚のたるみを処理するか考えなければいけません。

④、⑤は、方法かいくつかあるので、どの手術にするかご本人と相談をしながら決めます。

長いキズができてしまう+乳輪の移動では、1回で済む方法になります。

どうしても、長いキズは嫌な場合はどうすればよいでしょう?
2回に分ける方法があります。

手術の料金も余計にかかりますし、時間も取られてしまうデメリットもあります。
下垂しているとき
(キズが長くなる、下垂が強い場合、乳輪を移動しないといけないので、安全を取るなら、2回に分けた方がよいこともあります)

もしくは、
術後の脂肪吸引
キズは乳輪の周りですが、たるみが多いと皮膚が巾着状態になり、放射状にしわが生じます。

<イラスト④にあたる症例写真>
オペ前
術前、たるみある場合

オペ後
術後
乳輪の周りの皮膚のしわができ、巾着状になっています。これを不自然に思う人もいますし、長いキズ跡になるよりもよいというひともいます。

このような場合には、ご本人とお会いして、それぞれのオペの方法のメリット、デメリットをお伝えして、その人の生活背景もふくまて、いっしょに決めていきます。

いずれも大きくて、下垂している場合は、イラストの①、②のような小さいキズ、U字切開で済ますことができないのが実情です。

もっと深く内容を見たい場合は、
胸オペの疑問解決コーナー